パトロールにでていたシン達が不審な動きをする艦艇を見つけたのは、偶然だった。
「……レイ……」
『わかっている。とりあえず、停船を打診する』
 シンはミネルバに報告を、と彼は言い返してくる。
「了解」
 こういう事は彼に任せた方がいい。それは今までの経験からよくわかっている。だから、文句も言わずに即座にこういった。
「あれにジプリールが乗っていてくれれば、一番簡単なんだけどな」
 こう呟きながら回線を開く。
「こちら、シン。不審な艦を発見。これから目的を確認する」
『了解。お姉ちゃん達がフォローに向かうって』
 おそらく、ミネルバでも確認できていたのだろう。即座にメイリンがこう言ってくる。
「わかった」
 杞憂に終わればいいんだが、と思いつつ、シンは言い返す。
『貴艦の目的地及び目的を教えて頂きたい』
 その間にも、レイはあちらに確認の言葉を問いかけている。
 だが、当然、というべきか。相手からの返答はない。逆に攻撃をしかけてきた。
「ビンゴ、か?」
 それとも別の理由があるのか。
 どちらにしても、大人しくやられてやるいわれはない。
「レイ!」
『あぁ、わかっている』
 遠慮はするな、と彼は言いながらビームライフルを構える。当然、シンもだ。
「ルナ達が来るまで、持ちこたえるぞ」
『当然だ』
 ここで死んでは意味がない。レイはそう言い返してくる。
「だよな」
 そう言って、シンはインパルスを敵艦に向けて進めた。
 戦艦を相手にするときのセオリーは武装をつぶすか、推進装置を狙うかだったか。脳裏でアカデミー時代の講義を思い出す。
 もちろん、実戦の場でそんなことを考えている余裕はないに等しい。
 まして、現在は自分たちの方が無勢なのだ。辛うじて有利と言えるのは機動性だけだと言っていい。
「といっても、あちらさんだってMSを出してくるよな、この状況なら」
 相手が体勢を整える前に少しでも多くの敵を動けないようにするだけだ。
 そう考えて、ビームライフルの引き金を引く。レイも同じように相手をねらい打ちしていた。
 だが、問題があるとすればエネルギーだろう。
「インパルスはいいけど……ザクは、どうだろうな」
 レイのことだから心配はいらない、と思うが……と呟く。
 そのまま、相手の艦の艦橋をかすめるようにインパルスを移動させた。
 その時だ。
 ある人影が確認できる。
「レイ!」
 反射的にシンは叫ぶ。
「ジプリールが艦橋にいる!」
 予想していたとはいえ、実際に目にすると衝撃が違う。
『本当か?』
 レイもまた同じように驚きの声を上げた。
『なら、逃がすわけにはいかないな』
 絶対に、と彼は言い返してくる。
「当然だ」
 ここで全てを終わらせる、とシンは言う。そうすれば、きっと平和が訪れるはず。
「もう、二度と戦争なんて起こさせるかよ!」
 少なくとも、自分が生きているうちは……とシンは叫ぶ。そして、自分たちに向かってくる敵機に照準を合わせた。



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