「ジプリールが見つかった?」
 その言葉に、キラは視線を向ける。
「どこですか?」
 そのまま、こう問いかけた。
「ここからそう遠くないわね。現在、ミネルバが交戦中だそうよ」
 どうする? とマリューが問いかけてくる。
「行きましょう。もし、逃走しようとするなら、少しでもルートを潰した方がいいでしょうし」
 戦闘に加わらないとしても、牽制にはなるだろう。何よりも、自分たちの存在で地球軍が混乱を見せれば、ミネルバに勝機が見えるに決まっている。
「わかったわ。エターナルにもそう伝えるわね」
「お願いします」
 そう言って頷く。
「間に合えばいいんだけど……」
 そのまま、小さな声でこう呟いた。
「大丈夫だよ、キラ」
 ラウが即座にこう言ってくる。
「レイもシン君もかなり実力をつけている。ミネルバのもう一人のパイロットもね」
 それに、と彼は目を細めた。
「アスランもむざむざやられないだろう」
 だから、自分たちが付くまでは大丈夫ではないか。彼はそう続ける。
「なら、いいですけど」
 でも、戦場に《絶対》はない。キラはそのこともよく知っている。無意識のうちにネオへと視線を向けてしまった。
「アスランは大丈夫だよ。もしここで命を落とせばどうなるか。彼がよく知っているだろう」
 ラクスだけではなくカガリ達にも恨まれる。そうしたら、ゆっくりと眠ってなんていられないはずだ。
「……そうですね」
 彼の言葉に、キラは小さな笑みを浮かべる。
「とりあえず、着いたら、すぐに出撃できるようにした方がいいですよね?」
 その方が何が起きても対処できるだろうから、と続ける。
「そうだね。その方がいい」
 彼らにはアークエンジェルの護衛を頼むしかないだろう、とラウは頷いて見せた。
「大丈夫だとは思うが、念のためにね」
 それが何を意味しているのか、キラにもわかっている。
「……僕は大丈夫だと信じていますけど……みなさん、まだ疑っているのでしょうか?」
 不安そうに問いかけた。
「万が一のことを考えてだよ。彼のマインドコントロールが完全にとけているのかいないのか。それはわかっていないからね」
 ならば、元凶を排除した方がいい。そう言ってラウは笑う。
「……そうですね」
 確かに、元凶さえなくなれば何の心配もなくなる。それが彼らにとってもいいはずだ。
 キラはそう考えて頷いてみせる。
「これで終わりにしないとダメですよね」
 さらにこう付け加えた。
「もちろんだよ」
 こんな馬鹿なことはさっさと終わらせよう、とラウは頷いてくれる。
「もっとも、私がそれを言っても笑い話になりそうだがね」
 彼はそう言って苦笑を浮かべた。それがどうしてなのか。確認しなくてもわかる。
「ラウさん……」
「大丈夫だよ、キラ。今更何を言われても気にしない」
 だから、と彼は続けた。
「君は安心して前だけを見ていなさい」
 そう言ってラウは微笑む。
「……でも……」
「君がいる限り、もう間違えることはないよ」
 それは間違いなく、彼の本心のはずだ。だから、キラは小さく頷いてみせる。
「というところで、指示を出してこよう。君も自分のすべき事をしなさい」
 この言葉とともに彼はキラの髪を撫でた。そのまま、離れていく。
「僕がすること」
 それは、心配することではないはず。そう自分に言い聞かせると顔を上げる。
「詳しい状況をモニターに出してもらえますか?」
 そして、こういった。

 この時の、自分たちの判断が正しかったのだとわかったのは、戦闘が終わってからのことだった。



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