地球軍のその動きは宇宙へとあがったばかりのミネルバにも伝えられた。
「現在、ジュール隊及びオーブ軍が交戦中だそうです」
 通信を受け取ったメイリンがそう報告している。
「……オーブ軍?」
 彼らがあがったことは知っていたが、何故、ジュール隊と共同で、とシンは呟く。
「ディアッカがいるからだろう」
 ハイネに引っ張り出されたアスランがこういった。
「あいつは、アークエンジェルにいたからな。キラ達とも当然顔見知りだ」
 そして、彼らからの信頼も得ている。そう彼は続ける。
「……誰かさんとは大違いだ」
 シンはぼそっとこう呟いてしまう。
「シン……今はそこまでにしておけ」
 あきれたようにレイが声をかけてくる。
「だって、そうじゃね?」
 今のアスランは彼らから信頼を得ているとは思えない。むしろ、邪魔者ではないだろうか。
 それでも、拒否されていないだけましなような気もする。
「……本当、あいつ、キラさん達が関わってないとまともに見えるんだけどな」
 今回も関わっていないと言えば、言える。しかし、関わっているとも言えるのではないか。
 それでも、とりあえずまっとうなことを言っているからいいのか、とも思う。
「……それで、ミネルバはどうするのですか?」
 これから、とアスランはグラディスに問いかけている。
「あちらの処理はジュール隊に任せて我々はジプリールの捜索をおこないます」
 救援要請がない以上、自分たちが優先すべきなのはそちらではないか。彼女はそう言い返している。
「ジュール隊は我々よりも経験が豊富だわ。そう考えれば、私たちが下手に手を出さない方がいいでしょうね」
 オーブ軍にしてもそうだ。あちらには経験豊富な指揮官が揃っている。そう考えれば、自分たちの出る幕はないような気がする。自嘲めいた笑みと共に彼女はさらに言葉を重ねた。
「そんなことはないと思いますがね」
 反論の言葉を口にしてきたのはハイネだ。
「十分、経験を積んでいる方だと思いますよ、この艦のクルーは」
 ある意味、最前線だけを歩いているようだし……と彼は笑った。
「……多少、自信過剰の所はあるがな」
 ぼそっとアスランが付け加える。
「あんたにだけは言われたくねぇよ」
 シンは反射的にこう言い返してしまう。
「シン」
 あきれたような口調でグラディスが彼の名を呼ぶ。
「少なくとも、キラさん達に対しては否定できないと思いますけど?」
 本人達に嫌がられているのにまったく気付いていなかっただろう、とシンは言い返した。
「……わかっているさ、その位」
 自分が現実を見ていなかったことぐらい……とアスランが言い返してくる。
「それでも、俺は……」
「まぁ、そこまでにしておけって」
 今は落ちこむ時じゃないだろう、とハイネが笑いながら彼の背中を叩く。
「お前もだ、シン。あまり他人の心の傷をつついてやるな。お前だって、他人に知られたくないことの一つや二つ、あるだろう?」
 特に、これから戦場に出ようというときには……と口にしながら、彼は視線を向けてくる。
「……わかりましたよ」
 とりあえず、本人の前では言いません……とシンは口にした。
「お前な」
 何、そんなに頑なになっているのか……とハイネはため息をつく。
「んなの、決まってるじゃないですか。他人を傷つけて平気でいたからです」
 自分もしているかもしれない。でも、あれは酷いだろうと自分ですら思ったから……とシンは付け加えた。
「……俺も話だけは聞いているけどな。今は妥協しておけ」
 それよりも、ジプリールをさっさと見つけないと、いつまで経ってもこの戦争は終わらない。そうなれば、被害が大きくなるだけだ。ハイネはこう言ってくる。
「わかっていますよ」
 シンは即座に言い返す。
「そのために、俺はザフトにいるんですから」
 何を最優先にすべきか。それを間違えることはない。彼はそう言いきった。



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