話し合いのために、とイザーク達がアークエンジェルを訪れたいと連絡があったのは、それから五時間後のことだった。
「それは楽しみだね」
 くすくすと笑うラウに、皆があきれたような視線を向けてくる。
「ラウさん」
 そんなか彼に声をかけられるのは、やはり彼女だけだろうか。
「一応、ザフトの代表として来てくれるんですから、あまりいじめないでくださいね」
 でないと、オーブとして困ることになるかもしれない。もっとも、ディアッカがいるから大丈夫かもしれないけど……と彼女は小首をかしげつつ付け加えた。
「わかっているよ。これがアスランなら遠慮はしないがね」
 というよりも、遠慮をする理由がない。
 だが、イザークではあまり悪戯しすぎると後が厄介だからね、と笑みを深める。
「……それは、違うと思います」
 キラが深いため息をついてみせた。
「違わないよ」
 自分にとっては、と言い返す。
「第一、私がここにいること自体が彼らにとって見れば悪夢のようなものかもしれないよ」
 生きていると思っていなかっただろうしね、と付け加えた。
「アスランだってそうだったと記憶しているが?」
 そう言っても、キラは首をかしげるだけだ。どうやら、その時のことはよく覚えていないらしい。
「まぁ、そう言われてみればそうだったな」
 あれはあれで楽しかったが、と代わりにバルトフェルドが言う。
「そうだったの?」
 キラがラクスに確認を求めている。
「そうでしたわね、そう言えば」
 苦笑と共に彼女は頷いていた。
「まぁ、ディアッカがフォローするでしょ、それに関しては」
 さらにミリアリアが口を挟んでくる。
「私よりも優先するくらいだから、それこそきっちりと」
 さらに付け加えられた言葉に、誰もが苦笑を禁じ得ない。ひょっとしたら、自分の存在に気付いたときのイザークの反応よりも、彼女に対するディアッカの反応の方が楽しめるかもしれないな、と思う。
「とりあえず、だ」
 苦笑を浮かべたままバルトフェルドが視線を向けてくる。
「遊ぶなら話し合いが終わってからにしろ」
 でないと、あちらに体勢を整える余裕を与えることになるからな……と彼は続けた。
「もちろんですよ。ですが、同席はしますよ?」
 当然、と言い返す。
「それはかまわんだろう」
 後で説明をする手間を考えれば、と彼は直ぐに口にする。
「キラもその方が安心だろうしな」
 いきなり話題を振られて、来ては一瞬目を丸くした。だが、直ぐにはにかんだような表情で頷いてみせる。
「では、ご期待に添えるようにしないとね」
 そう言いながら、そっとキラの髪に触れた。
「そこまでだ」
 しかし、そこでバルトフェルドの制止が飛んでくる。
「それ以上のことは二人きりの時にやれ」
 今まではともかく、これからは人目を気にしろ……と彼は続けた。
「……仕方がないですね」
 こう言うと、ラウはそっとキラの髪の毛から手を離す。
「そう言えば、アスラン君達はどうしているのかしらね」
 話題を変えるようにマリューが言う。
「……あいつらもザフトの主力だ。追いかけてくるんじゃないか?」
 まぁ、アスラン以外はいてくれた方がいいだろうが……とバルトフェルドは言葉を返す。
「問題はアスランの出方、だな。前回、思い切り現実を突きつけてやったが……それを受け止めているかどうか」
 最悪、現実逃避に走っている可能性もある、と彼は続ける。
「大丈夫じゃないかな?」
 それに、キラはこういった。
「……最果てまで落ちこんでいるかもしれないけど、でも、現実逃避をするような性格じゃないから」
 そうだったら、きっと、パトリックがあんな事をしていたときに、さっさと逃げ出していたと思う。彼女はそう続ける。
「なるほど。お前さんが言うなら、そうかもしれないな」
 バルトフェルドの言うとおり、キラの言葉は正しいのだろう。しかし、どこか面白くないと思ってしまうラウだった。



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