派手としか言えないパーソナルカラーのグフがデッキに安置された。
「……ハイネさん?」
 何で、とシンは思う。
「アスランの暴走抑止のため、かな?」
 それに言葉を返されるように言葉が返される。それだけではなく、背後から抱きつかれた。
「ハイネさん!」
 反射的に、シンは叫んでしまう。
「どうした、シン」
 その声が聞こえたのか。レイ達が駆け寄ってくる。しかし、シンの置かれている状況を見た瞬間、あきれたような表情を作った。
「乗艦されるとは聞いていましたが……?」
 ずいぶんと派手なBGM付きの登場ですね、と彼は口にする。
「手近にいたからな」
 流石に女性にするとセクハラになるが、シンならば構わないだろう。そう言って彼は笑う。
「そう言う問題じゃねぇだろう!」
 シンはとっさにこう言い返す。
「ともかく、さっさと放せ!」
 鬱陶しい、といいながら反射的に肘を相手の腹部へと繰り出した。さすがは《FAITH》と言うべきか。あっさりと避けられたが。それでも、解放されたからいいことにする。
「それにしても、何であんたがミネルバに?」
 ただでさえ、この艦には《FAITH》は二人――うち一人からはさっさと剥奪して欲しいが――がいるのに、と思う。
「オーブ軍と合流予定だから、だな」
 それに、ハイネはあっさりと言葉を口にしてくれた。
「……はぁ?」
 それがどうして、と思う。
「どうやら、オーブ軍の旗艦はアークエンジェルらしいんだよ」
 しかし、ここまで言われれば納得できてしまった。
「アスラン対策、ですか?」
 シンが口を開くよりも先にレイがこう問いかける。
「そんなところだ」
 苦笑と共に彼は頷く。
「で、そのアスランは?」
 彼は逆にこう問いかけてきた。
「……あいつは……」
「自室にいますね」
 言葉に含まれた複雑な感情をきちんと読み取ったのか。ハイネがいぶかしげな視線を向けてきた。
「先日、アークエンジェルから戻ってからと言うもの、何かを考え込んでいるようです」
 だから、ここしばらく大人しいのだ……とレイが言葉を返す。
「下手すると、丸一日、顔を見ないって事もあったな」
 流石に、作戦には参加しているようだけど……とシンも付け加える。
「何があったんだ?」
 予想外の状況なのだろう。ハイネは首をひねりながらこう問いかけてきた。
「さぁ」
 流石に、それはわからない。だが、とシンは心の中で呟く。あちらにはラウ達がいる。彼らが何かをしたのではないか。それで、アスランが大人しくなっているように思える。
「でも、静かでいいですよ」
 アスランが馬鹿なことをしていないおかげで、と付け加えた。
「脱走騒ぎはないですから」
 確かに、とレイも頷いてみせる。
「でも、実際にアークエンジェルの船影を見たらどうなるか、わかりません」
 彼はきまじめな口調でさらに言葉を重ねた。
「……そうか。ありがとう」
 二人の言葉に、ハイネは頷いてみせる。
「艦長に挨拶をしたら、あいつの顔を見に行ってみるわ」
 それから判断をしよう。そう彼は続ける。
「おまかせします」
 自分たちだと逆効果になりかねない、とレイも頷き返す。確かにそうだろう、とシンは苦笑を浮かべながら同意をするように首を縦に振って見せた。



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