そのころ、キラはジプリールが乗ったシャトルの行方を捜していた。
「このコースだと、目的地は月か」
 モニターに映し出された軌道を見てネオが断言をする。
「何故、そう言いきれるんだ?」
 即座にバルトフェルドが問いかけた。
「あそこには、名目上は地球軍の基地でも、内実はブルーコスモスの拠点、という施設があるんだよ」
 そうすれば、彼はため息とともにはき出す。
「……あそこって、そうだったのか?」
「知らなかった」
「お前は何でも『知らない』だろう」
 それに、三人が直ぐに反応を見せる。
「そんなことない。ステラだって、知っていることは知っている」
 しかし、ステラはアウルの言葉が気に入らなかったのか、頬をふくらませて見せた。
「本当のことだろう?」
 からかうようにアウルが言い返す。
「キラやラクスが、色々と教えてくれるもん」
 それに対するステラの言葉がこれだ。
「そうなのか?」
 こう言いながら、ネオがキラへと視線を向けてくる。
「日常の、ちょっとしたことです。お茶の淹れ方とか、そんな感じの」
 興味を持っていたみたいだから、と手を止めることなく言い返す。
「いけませんでしたか?」
 だとするなら、次からは余計なことをしないようにするが……とキラは付け加える。
「逆だ。むしろありがたい」
 自分では、そんな女の子らしい事は教えられないからな……と彼は笑う。
「もっとも……どこまで許されるかわからないが」
 自分たちは、と直ぐに彼はため息とともにはき出した。
 それは、自分たちがどのような形であれブルーコスモスに関わっていたと知っているからだろう。
「あまり心配しなくていいと思うがな、それに関しては」
 わきで話を聞いていたバルトフェルドが口を挟んできた。
「カガリにそのつもりはないだろうし……お前さん達はこうして協力をしてくれている。多少の職業選択の制限はあるかもしれないが、少なくともオーブ国内では普通の生活が出来るだろう」
 もっとも、彼ら三人には別の意味での制限はあるだろうし、それが完全になくなることはないだろうが。声を潜めてそう付け加える。
「まぁ、それは仕方がないことだろうな。こうして好きなことをさせてやれるだけましと言うところだろう」
 戦うこと以外に楽しみを見いだせるようになっただけで、と彼は続けた。
「ともかく、だ。それは脇に置いておいても……これからのことをどうするか、だな」
 セイランがジプリールをかくまっていたのは隠しようのない事実だ。いくら本人が逃亡済みとはいえ、何もしないでいるわけにはいかないだろう。
 バルトフェルドのこの言葉に、キラも頷く。
「追いかけるしか、ないでしょうね」
 ザフトとの共同作戦になるかどうかは別にして、自分たちも宇宙へあがらなければいけないだろう。キラはそう口にした。
「でも、カガリは置いていかないといけないでしょう」
 彼女にはいい加減、オーブの国民のことを優先してもらわなければいけない。キラはきっぱりとそう言いきる。
 今までだって、彼女がオーブの国民のことを考えていなかったわけではない。だが、国を離れていればどうしても後手後手に回ってしまうのだ。
 だから、今回は絶対に同行させられない、と思う。
「確かに。腰を据えて立て直しをして貰わないとな」
 バルトフェルドもそう言って頷く。
「しかし、そうなると誰が責任者になるんだ?」
 カガリは動けない。サハクは関わってこないだろう。セイランのバカ息子は最初から論外だろうし……と意味ありげな口調で彼は問いかけてきた。
「僕が行くしかない、と考えています」
 皆が認めてくれるなら、とキラは言った。
「……いいのか?」
「それが、僕の責任だと思いますから」
 カガリをオーブから連れ出した、と微笑む。
「ラウさんも手伝ってくれるそうですから」
 だから、と付け加える。
「お前が決めたのなら、それでいい。まぁ、俺も付き合うがな」
 バルトフェルドがそう言って笑う。
「……何? キラ、宇宙に行くの?」
 その会話を聞きつけたのだろう。ステラが問いかけてきた。
「多分ね」
「なら、ステラも一緒に行く。一緒に行って、キラ、守ってあげる」
 言葉とともに彼女はキラに抱きついてくる。
「ステラ、あのね」
 許可が出るかどうかわからないのに、とキラは言い返す。
「まぁ、それについてはあとで、だ。もうすぐ代表が戻ってくるはずだからな」
 それから相談しよう、とバルトフェルドが彼女をなだめてくれる。
「そうだな。それに関してはきちんと相談して、許可を貰ってからだ」
 さらにネオもこう言ってきた。
「大丈夫。僕のことを守ってくれる人はたくさんいるから」
 キラも微笑みながらそう言う。
「でも、キラと一緒にいたい」
 だめ? と彼女はキラを見上げてくる。それに何と言葉を返せばいいのか、直ぐに思いつけなかった。



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