このまま、アスランを放り出しても同じ事だ。ここでしっかりと話をしてしまわなければいけないのではないか。 カガリには、これからオーブをセイランから取り戻すという重要な役目が待っているのだし……とキラは言う。 「そうだな」 それはそうだ、と彼女も頷いてみせる。 「でも、その前にお前は着替えてこい」 ラウとバルトフェルドも、と彼女は付け加えた。 「男共は放っておいてもいいが……キラが汗くさいのはいやだからな」 女の子は身綺麗にしておかないと、と言うが、初めてであったときの彼女はとてもそう言えない状況だったように記憶している。 もっとも、あの時は仕方がないと言えば仕方がなかったのかもしれない。第一、あの時は彼女が女だとは思えなかったし、と付け加える。 それでも――いや、そんな彼女だからこそひかれた、と言うことも事実だ。 何よりも、キラ自慢を存分にしても気にしない女性だったのだ、カガリは。そう言うところも自分にとっては好ましい相手だったと言える。 いや、今だってそうだ。 しかし、彼女たちの耳に自分の声は届かない。 それどころか、邪魔者扱いだ。 「カガリ……」 いいの? とキラが問いかけている。 「僕は気にしないよ?」 「私が気にするんだ。とりあえず、着替えてこい」 その間に、アスランの撮影会をしておくから……と付け加えられて、思わずうめき声がこぼれ落ちた。できれば、子供達にはこんなみっともない姿は見せたくないのだが……と口の中だけで呟く。 「行こう、キラ。戦闘状態ならばともかく、今はその心配はないだろうしね」 ラウが優しげな声音でそう告げる。 「はい」 それにキラは素直に頷いて見せた。 自分がやっていたことと彼の言動に違いはないように思える。しかし、キラの表情を見ていると何か違いがあるようなのだ。 それは何なのか。 わかっていれば、自分たちの距離はこんなにはなれなかったのだろうか。 そんなことを考えている間に、キラの姿は彼の視界から消える。 「……アスラン」 代わりにラクスの声が耳に届いた。 「何でしょうか」 即座に言葉を返す。 「いい加減、何かに気付いていますわよね?」 何故、カガリとキラがアスランを必要としなくなったのかに……と彼女は彼の顔をのぞき込んでくる。 「……何がおっしゃりたいのですか?」 確かにそうかもしれない。だが、それを認めるのはしゃくだ。だから、とアスランはこういう。 「本当に困った方ですわね、あなたは」 そうすれば、あきれたような言葉が返ってくる。 「いい加減、強情を張るのはおやめになったらいかがですか?」 さらに彼女はこう付け加えた。 「あきらめろ。そいつは見栄っ張りなんだ」 相手が誰であろうと、弱みを見せようとはしない……とカガリがため息をつきながら言う。 「まったく……それが悪いとは言わないが、時々、本当に自分が必要とされているのかどうか、わからなくなる」 困ったものだ、と彼女は付け加えた。 「そのくせ、自分が正論だと思っていることをこちらに押しつけるしな。こちらの意見も聞かずに」 そう言うところも、問題ではないか。そう彼女は言葉を重ねた。 「ラウはあれでも、キラの意見を尊重するときはするぞ」 弱みも見せているようだしな、と言われて目を丸くする。 彼は自分以上にキラに弱みを見せたくないと考えていると思っていたのだ。それとも、何か別の理由があるのだろうか。 「お互いに支え合うものだろう?」 好きあっている者同士なら、と言われて、自分たちの関係がどうだったのだろうか……と悩む。 「とりあえず、降ろして上げたら?」 写真はちゃんと撮ったから、とミリアリアが笑いながら口を挟んでくる。 「そうだな。このままにしておいてもいいかもしれないが、話しはしにくいか」 言葉とともにカガリが視線を移動させた。次の瞬間、周囲に人が集まってくる。 「頼んだぞ。あぁ、念のために足は拘束しておけ」 キラに飛びかかられても困るからな、と彼女は笑う。 「カガリ! お前は俺を何だと思っているんだ!」 反射的にこう怒鳴っていた。 |