流石に、目の前の光景にはキラだけではなくラウも言葉を失った。
「……アスラン、趣味が変わったの?」
 一分ほど経ってから、キラがようやくこんなセリフを口にする。
「そんなはずないだろう!」
 即座にアスランが叫び返してきた。
 そう言いたくなる気持ちは、男としてわかる。だが、キラはそうではない。
「なら、なんでそんな恰好をしているのさ」
 真顔で彼女はそう聞き返している。
「カガリに聞けばいいだろう!」
 自分をこうしたのは彼女だ、とアスランは口にした。
「カガリ?」
 そうなのか、とキラが視線で問いかける。
「正確には違うぞ。そいつが抵抗をしたからこうなった、と言うのが正しい」
 自分はここまでするつもりはなかった。大人しくしていたら、もう少しましな状況で収まっていたはずだ……とカガリは言い返してくる。
「そうですわ。まったく……見苦しいったらありませんわね」
 さらにラクスまでもがこんなセリフを口にした。
「……何をしたわけ?」
 彼女にまでこう言われたとなれば、アスランにも非があるのだろう。それは何なのか。それを知りたいというようにキラはバルトフェルドへと視線を向ける。
「パイロット控え室に先回りしようとしたアスランと、それを止めようとしたカガリ達の間で一悶着あっただけだ」
 その結果がそれだ、と彼は的確に教えてくれた。
「……キラのシャワーシーンでものぞこうとしたのか?」
 これは冗談だろう。しかし、他の者達にはそう聞こえなかったらしい。
「アスラン、そこまで最低な方に成り下がりましたの?」
 ラクスが低い声で問いかけている。
「よりによって、キラの、とは……ストーカー認定されてもおかしくはないな」
 さらにカガリがあきれたような声音でそう言った。
「誰がストーカーだ!」
 何かが彼の逆鱗に触れたのだろうか。アスランがそう叫ぶ。
「俺はただ、キラと話をしたかっただけだ! カガリとも話さなければいけないことがあるだろうが」
 さらに彼はそう付け加える。
「……順番が違わない?」
 それにキラがこう言い返す。
「僕よりも先にカガリと話し合わないといけないでしょう、アスランは」
「……私はもう、それをふったんだがな」
 キラの言葉にカガリがあきれたようにそう言った。
「でも、アスランはそれに納得してないんじゃないの?」
 だから自分にちょっかいをかけてくるのではないか。キラは真顔でそう付け加える。つまり、アスランが自分と話をしたいというのも、カガリと復縁するための根回しだ、と彼女は考えているらしい。
 もちろん、実際は違う。
「……本当にこの子は……」
 どこをどう見ていればそう言う判断になるのか。もっとも、そう誤解をしてくれているならそれでいい、と思う。
「……キラ……」
 もっとも、アスランはショックを隠せないようだ。
「まぁ、キラですものね」
 苦笑と共にラクスが呟く。
「何なんだよ、もう」
 キラがそう言って頬をふくらませたときだ。
「どうしたの、みんな」
 こう言いながらミリアリアが駆け寄ってくる。その手には彼女愛用のカメラがあった。
「ミリィ?」
 どうしてカメラ、とキラが問いかける。
「あぁ。ラクスさんが、このアスランの写真をみんなに見せたいって。写真にすればデーターで送れるでしょう?」
 きっと、子供達は喜ぶわね……とミリアリアは笑った。
「……どうせなら、レイにも送りたいね」
 彼であれば、適切に使ってくれるだろう。ラウがそう言った瞬間、アスランの唇から意味不明のうめきが漏れた。



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