後の始末をザフトに任せて、アークエンジェルへと帰還する。 「カガリとラクス嬢がいるから大丈夫だとは思うが……」 だが、あれも収容されている以上、気をつけないといけないだろう。ラウはそう呟く。 「しかし、できればキラを早々に休ませたいのだがね」 先ほどのフリーダムの動き。あれを見ていれば、キラが無理をしたのだと言うことは十分にわかった。 もちろん、本人はそう思っていないだろう。だがSEED因子を呼び起こすと言うことは、それだけ体に負担がかかることでもある。できれば、使わせたくない、と言うのがラウの本音だ。 だが、彼女のその力をあてにしなければいけないと言うことも事実。 「まったく、歯がゆいね、色々と」 だから、せめて彼女に休息だけは取らせたい。 『心配するなって』 何か報告を受けたのだろうか。楽しげな声音でバルトフェルドが声をかけてくる。 『あれはしっかりと捕縛されているそうだ……カガリに』 だから、心配はいらない……と笑いながら付け加える彼に、いったいどのような状況なのかと思わずにはいられない。 「ですが、アスランですからね」 何をしでかしてくれるか、とわざとらしいため息とともに言い返す。 『まぁ、先に俺たちが降りてからキラを降ろせば大丈夫だろう』 すこしでも早く休ませたいのは事実だが、とバルトフェルドは口にする。 『あの……僕、自分の身ぐらいは守れますけど……』 小さな声でキラが口を挟んできた。 「そうかもしれないが、万が一のことがあるしね……これからのことを考えれば、君にはあまり無理をして欲しくないのだよ」 だから、こう言うときは素直に守られていなさい……とラウは言葉を返す。 「何よりも、女性陣が怖いからね」 アークエンジェルは女性の方が強い。それはカガリやラクスが乗っているからだろう。もちろん、それでなくてもキラがいる以上当然ではないか……と心の中だけで付け加えた。 『そうそう。たまには男の沽券を見せる場面をよこせ』 いや、こういう場面ではあまり見せたくないのだが。バルトフェルドの言葉に、ラウは思わずそうつっこんでしまう。 『わかりました』 だが、それでキラが納得してしまった以上、あえて何も言わない。 「では、先に着艦させて貰おう」 ついでにアスランを足蹴にでもするか。ラウは代わりにこういった。 『足蹴にはされているだろうな、既に』 くつくつと笑いを漏らしながらバルトフェルドが同意をする。 『まずはそれを確認しに行くか』 この言葉とともに彼はハッチへとムラサメを向けた。その後をラウも追いかける。 フリーダムは周囲を警戒するようにその場に留まっていた。 「アスランが落ち着いていれば、直ぐに帰還して貰って構わないからね」 と言うよりも、早々に戻ってきて欲しいのだが、とラウは彼女に声をかける。 『ラウさん……』 キラが困ったような声音で言葉を返してきた。 「彼は確かに《FAITH》だがね。今回のことはどこまで許容されているかわからないからね。それも確認しないといけない」 まして、公衆の面前であのようなことをされたのだ。そう付け加えれば、キラが意味不明の呟きを漏らしている。どうやら、今になってあれはまずかったのではないかと考えているようだ。 「君が気にすることではないよ。避けられなかったアスランが悪い」 あの攻撃を、とラウはひくい笑いと共に告げる。 「大丈夫。直ぐに帰還できるから安心しなさい」 『はい』 ラウの言葉にキラがすぐに頷いて見せた。だが、その表情に微かに疲労が見え隠れしている。やはり、すこしでも早く彼女を休ませないといけない……と心の中で呟く。 また、同じようなことがあり得ないとは言えないのだ。 もっとも、先ほどの機体はザフトが接収していった。きっと、直ぐに機体の解析が行われるだろう。そうなれば、彼らに任せてもいいような気がする。 後は、とラウは心の中で呟く。 いい加減、アスランを何とかしなければいけないか。 今回はいい機会かもしれない。 「お二人のお手並み拝見かな?」 とりあえずは……と唇の端を持ち上げた。 |