まさか、ここでザフトが介入をしてくるとは思わなかった。
 それに関しては構わない。だが、とキラは顔をしかめる。
「アスランが来ると、厄介なんだけど……」
 と言うよりも邪魔、と呟いてしまう。
 どうして自分が攻撃をしようとするタイミングで前に出てくるのだろうか。
「アスラン! 援護しに来ているの? それとも、邪魔をしに来ているの?」
 思わずこう怒鳴ってしまう。
『キラ、俺は……』
 即座に彼は反論をしようとしてくる。
『こちらはこちらのフォーメーションで動いている。それを壊すようなことをするなら、下がっていろ!』
 だが、それよりも早くバルトフェルドがこう言ってきた。
『確かに。君のせいでキラが危険にさらされかけている、とそろそろ自覚してくれるかな?』
 さらに、ラウが厳しい口調で告げる。
『……邪魔……俺が?』
 信じられない、とアスランが呟いたのが聞こえる。
「自覚、なかったんだ」
 さっきから、何回、攻撃のチャンスを殺してくれたと思っているのか。
 それだけならばまだいい。
 フリーダムの動力を考えればアスランの機体がバッテリー切れになっても動けるのはわかっている。
 しかし、周囲への被害はそういうわけにはいかない。
 もし、逃げ遅れた人がいたら……と考えると怖いとしか言えないだろう。そうでなくても、持ち出せなかった大切なものが建物の中に残されているはずなのだ。
 それらを失う悲しみは、自分もよく知っている。
「ともかく、邪魔! これ以上邪魔するなら、撃ち落とすよ?」
 とりあえず、相手がアスランなら少々手荒なことをしても構わないだろう。そう考えながら、キラは言葉を口にする。
『キラ!』
 信じられない、とアスランが口にした。
「忘れたの? 僕は守るもののためなら、アスランだって撃墜出来るよ」
 実際、それに近いことはやったではないか。言外にそう付け加える。その瞬間、胸に走った痛みは、失われた存在を思い出してのことか。
 それを無視して、キラはアスランの機体にフリーダムを近づける。
『キラ?』
 なにを、とアスランが問いかけてきた。
 それには構わず、キラはフリーダムを動かす。次の瞬間、アスランの機体は蹴落とされていた。
「と言うわけだから、そこで大人しくしていてよ」
 落下していく機体に向かって、キラはそう呟く。
『……キラ、お前な……』
 バルトフェルドのあきれたような声が通信機越しに聞こえる。
 ひょっとして、今の行動はまずかったのだろうか。キラがそう考えたときだ。
『どうせなら、徹底的にやれと言っただろう?』
 しかし、カガリのこのセリフは何なのか。
『とりあえず、誰かそれを拾ってこい!』
 さらに彼女はこう命じている。
 だが、今がチャンスだと言うことも否定できない。
 あまりの光景に、デストロイのパイロットも呆然としているのか――それとも別の理由からか――動く気配が感じられない。
 今ならば、パイロットを殺さずに機体だけ破壊することが可能なのではないか。
 そうかんがえると同時にキラは行動を開始する。
 一瞬遅れて、相手が反応を返してきた。
 しかし、何故かキラにはそれがゆっくりに感じられる。
 相手の攻撃をかいくぐりながら、今までで目星をつけていた部分へとビームサーベルを突き立てた。
 次の瞬間、デストロイが大きくのけぞる。
 体勢を立て直すことなく、そのままゆっくりと倒れていった。



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最遊釈厄伝