地球軍が何かをしかけてくるだろう。それは予想していた。 しかし、まさかこんな光景を目の当たりにするとは思わなかった……と誰もが思う。 「救援を求めていますが、どうします?」 ミリアリアがこう声をかけてくる。 「なら、助けに行かないと……」 キラが即座にこういった。 「……だが、あれは危険だよ?」 通常の攻撃が通用するかどうかわからない、とラウが言ってくる。 「わかっています」 それでも、とキラは続けた。 「助けを求めている人を見捨てるわけにはいきません」 何も出来ないかもしれない。だが、それでも何かできるはずだ。 「一人でも多くの人を避難させられるなら、僕は行きます」 きっぱりと言い切れば、彼は仕方がないというように微笑んでみせる。 「君ならそう言うと思っていたよ」 そう言って彼はそっとキラの頬を撫でてきた。 「なのに、あんな事を聞くんですね」 「当然だろう。私の言葉程度で君がためらうようなら、いかない方がいい」 皆を危険にさらすだけだ、と彼は続ける。そして、その言葉を否定できない。 「どちらにしても、君が本気で望むのなら、私は逆らえないがね」 さらに言葉を重ねて来る彼にいったいどのような反応を返せばいいのだろうか。 「ラウさんは、時々、ものすごく意地悪です」 悩んだあげく、キラはこう言い返す。 「甘やかすだけでは君のためにならないからね」 だが、それも彼には予測済みの言葉だったのか。即座にこう言い返されてしまった。 「……いちゃつくのは部屋に帰ってからやれ」 あきれたような口調でバルトフェルドが口を挟んでくる。 「別に、僕は……」 「お前にそんなことが出来ないとわかっている。ただ、そいつは間違いなく故意にやっているからな」 始末に負えないといいながら、彼は視線をラウへと向けた。それに肯定も否定もしないと言うことは、そう言うことなのだろうか。そう思いながらキラは彼を見つめる。 「そう見えるとは思いませんでしたよ」 しれっとして彼は笑みを深めた。 それだけで、バルトフェルドの言葉が嘘ではないとわかってしまう。 「……ラウさん……」 困ったような声音で彼の名を呼ぶ。 「気のせいだよ、キラ」 しかし、彼は笑みを深めることでそれ以上の質問を封じてくれた。これは、後でもう一度問いかけた方がいいような気がする。 「とりあえず、ネオ氏があれについて知っているかどうか、確認した方がいいだろうな」 どんなことでも構わないから、とバルトフェルドは言う。 「と言うわけで、付き合え」 彼はラウへとそう声をかける。 「それがいいでしょうね」 彼もそれには頷いて見せた。 「なら、僕も……」 一緒に行く、とキラは続けようとした。 「お前は休んでおけ。と言うわけで、キラの監視を頼んでも構わないかな?」 ラミアス艦長、とバルトフェルドが続ける。 「もちろんですわ」 微笑みながら彼女が言い返す。しかし、どこかその笑顔に影があるように見える。やはり、ネオのことが引っかかっているのではないか。 「頼む。ラクスも頼むぞ」 「わかっていますわ」 ラクスがそう言いながら歩み寄ってくる。そのまま、がっしりとキラの腕を抱え込む。 「実力行使が必要なら、カガリにお願いしますし」 その前に自分とミリアリアだけで十分なような気はするが。彼女はそう続けた。 「……ラクス……」 「だって、本当のことでしょう?」 こう言って微笑む彼女に勝てる人間がどれだけいるか。ちょっと知りたいと思う。だが、彼女たちには間違いなく同じ言葉を返されるだろう、と言うこともわかっている。 「と言うことで、ゆっくりとお茶にしましょう?」 そう声をかけてくるラスクを尻目に、二人がブリッジを出ていくのがわかった。 |