オレンジで塗られたグフが姿を見せる。どうやら、ハイネ達が連中の捜索を諦めてこちらに応援に来たらしい。
 増援が来た以上、自分たちに勝ち目はないと判断したのか。地球軍は即座に撤退を開始する。
「その判断は間違ってねぇけどさ」
 だったら、最初から攻撃してくるな……とシンが吐き捨てたときだ。
『シン、レイ』
 ルナマリアの声が耳に届く。
「どうした、ルナ」
 何かあったのか、と即座に聞き返す。
『アスランがブリッジ前で騒いでいるって、メイリンから』
 彼女の言葉に、何故彼がそんな行動を取るのか、直ぐには理解できない。
『キラさん達がブリッジにいるからだろう』
 だが、レイの言葉で状況が飲み込めた。
「何やっているんだ、あいつは」
 こんな時に彼女を守るために戦いもしないで。シンはそう呟く。
『ともかく戻るぞ』
 おそらく、このままではキラ達はアークエンジェルに戻れない。それでは彼等だけではなく自分たちにとっても不利益が生じるのではないか。
 レイはそう言う。
『どちらにしても、キラさんが困るのは事実だろうな』
 ともかく、急いで戻らないと……と彼は口にする。そのまま、ザクの方向を変えた。
「確かに。あいつを止めるにはそれなりの実力が必要だしな」
 そう呟くと、シンもまたインパルスをミネルバへと向ける。
『ちょっと待ってよ!』
 ルナマリアも慌てて追いかけて来た。
 ひょっとしたら、出撃するときよりも真剣だったのではないか。ふっとそんなことも考えてしまう。
 しかし、どう考えてもキラの方がアスランよりも弱い。信頼できる者達が傍にいたとしても、隙をつかれてはどうしようもないのではないか。
 何よりも、自分がそうしたいのだ。
 だから、とシンはさらにインパルスのスピードを上げた。

 外からドアを叩く音がブリッジ内に響いている。
「……アスラン……」
 どうしていいのかわからない、と言う表情でキラが彼の名を呟く。
「まったく、あいつは」
 可愛い妹にこんな表情をさせるなんて、とカガリはまた怒りを新たにする。もう、殴るだけでは気が済まない。本当にどうしてやろうか、と考えてしまう。
「君がいるのはわかっているだろうにね」
 ルージュはカガリの専用機だ。他の誰も使うことはない、と彼であれば知っているはずだ……とラウは言った。
「と言うことで失点+1だな」
 さて、どうするべきか……と彼も笑う。
「カガリ……それに、ラウさんも……」
 キラが今度は二人の名を呼ぶ。
「ラクスがいないだけましだろう」
 そんな彼女にカガリがこう言い返す。
「ここがアークエンジェルでなかったことも、ね」
 あそこであれば、アスランに味方をするものは100%存在しない。だが、ここではどうだろうか。ラウはそうも付け加えた。
「どちらにしても、このまま放置するわけにはいかないのではないかな?」
 どうするのか、と視線をグラディスへと向ける。
「今しばらく、このままで。そろそろ、あの三人が戻ってきますから」
 そうしたら、ドアのロックを外すから、と彼女は付け加えた。
「その後は、アスハ代表のご自由に……私たちは見なかったことにします」
 こう言って彼女は笑う。
「では、遠慮なく」
 にやりと笑いながらカガリはまた指を鳴らし始める。
「だから、カガリ……そうすると指が太くなるって、ラクスが」
 キラはキラでこんなセリフを口にした。あるいはかなり動揺しているのかもしれない。
「彼女の場合、構わないだろう」
 そんなキラを落ち着かせようと彼女の頬に触れる。その瞬間、どこか安心した表情でキラは微笑んで見せた。



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