いきなり始まった戦闘に、ネオは忌々しそうに舌打ちをする。
「ネオ……」
 それに、不安を隠さずにステラが問いかけてきた。
「どこの誰の指示だろうな」
 これは、と彼は呟く。それでも彼女を安心させるようにその髪の毛を撫でてやる。
「まぁ、今のうちにさっさと戻るか」
 彼等がザフトの目を惹きつけてくれている間に、と続けた。
「いいのか?」
 スティングが不安そうに言う。
「構わないだろう。今の俺たちには何も出来ない」
 自分たちの機体があるならばまだしも、いくらエクスンデットでも生身でMSとやる会えるはずはないのだ。
「あいつらがどこにいるのか。確認できただけでもいいと言うことにしておけ」
 そして、どうやら何か協力関係を築こうとしていることも、だ。
 それをネタにオーブからのさらなる協力を引き出せるのではないか。
 どちらにしても、戻らなければいけないだろう。
「アウル」
「側にはいないよ!」
 ネオの言葉に、彼が直ぐにこう言い返してくる。
「そうか。なら、撤収するぞ」
 この言葉とともに彼はきびすを返す。そんな彼の後を三人がついてきた。
 そんな彼の視界に近づいてくるアークエンジェルらしき船影が映る。その瞬間、心の中をよぎったの感情は何なのか。彼自身にもわからなかった。

 ミネルバへ戻った瞬間、アスランは信じられないものを見つけてしまう。
「……ルージュ?」
 何故、これがここにあるのだろうか。
 これは、アークエンジェルにあるべきもののはずなのに。
 平時であれば、まだ、理由は想像がつく。しかし、今は戦闘中だ。いや、戦闘中だから押しかけてきたのか、とアスランは直ぐに考え直す。
「と言うことは、やっぱりここにいるんだな」
 キラ、と唇の動きだけで囁く。
 同時に、自分はどうするべきか、と悩む。
 このまま出撃をするか。それとも、キラ達を探すか、だ。
「……俺が出撃をしなくても大丈夫か」
 出撃をしてしまえば、きっと、自分が帰還する前にあの二人がキラを連れ去ってしまうだろう。
 失われてしまったと思ったチャンスが目の前にあるのだ。それを手にしなくてどうする。
 もちろん、それではいけない……と囁く声もあることは事実だ。だが、それ以上にキラに会いたい気持ちの方が大きかった。
「さて、どこにいるか」
 可能性が高いのは、ブリッジか。それとも、前回、カガリ達が使っていたという貴賓室だろうか。
 どちらだろうな、とアスランは呟く。
「とりあえず、ブリッジに行くか」
 そこであれば、戦況もわかるだろう。それから自分がどうするか決めてもいいのではないか。
「そうするか」
 呟きと共にアスランは行動を開始した。

 小さなため息とともにグラディスが会話を終わらせる。
「予想通りですわ」
 そのまま彼女は苦笑を向けてきた。
「そうか」
 彼女の言葉を耳にした瞬間、カガリが嬉しそうな表情を作る。そのまま指をならした。
「それならば、約束通りにさせて貰おう」
 この言葉に、ブリッジにいた者達は皆、苦笑を浮かべる。ただ一人を除いては、だ。
「カガリ……」
 キラだけが不安そうな表情で彼女を見つめている。
「心配するな。いくら私でも、生身でコーディネイターアスランを殺せるはずがないだろう?」
 にこやかな表情で彼女はそんなキラに声をかけた。しかし、それを信じられるかどうか、と言えば、答えは『否』ではないか。
「そもそも、だぞ。あいつはお前の名前は呼んでも私の名前は呼ばない。付き合っていたのは誰だと認識しているんだ、あれは」
 だから、お仕置きだ。そう彼女は付け加える。
「まぁ、それは当然の権利だろうね」
 苦笑を深めながらラウは口を開いた。
「私が手を出さないだけでもましではないかな?」
 まぁ、その後できっちりと文句を言わせて貰おう。心の中でそう付け加える。
「……手加減してね」
 諦めたのか。キラはこう呟いた。



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最遊釈厄伝