「……いったい、何が……」
 アスランは顔をしかめながらそう呟く。
「さぁ、な。とりあえず、捜索は一時中断だ」
 代わりにあれらを排除しないと、とハイネは言う。
「お前はミネルバへ戻れ。こっちには余分なMSはないからな」
 出撃をする気なら、戻るしかない。彼はそう言いたいのだろう。
「そうさせて貰おう」
 ここで待っていても時間の無駄だ。それよりは地球軍を撤退させて、そのままキラを捜す方がいい。そう判断をしてアスランは言葉を返す。
 そのまま、彼はきびすを返した。
「車を借りるぞ」
 そう言い残すと、手近にあったザフト所有の車に体を滑り込ませる。
「壊すなよ」
 止めても無駄だと判断したのだろう。ハイネはそう言い返してくる。
「善処する」
 そう言い返すと、さっさとエンジンをスタートさせた。そのまま、アクセルを踏み込む。
「ったく……予告ぐらいしろ」
 そんなハイネの声が耳に届く。しかし、アスランはそれに言葉を返さない。いや、返す余裕がなかった、と言うべきか。
「キラ……」
 まだ、連中が暴れていると言うことは、彼女の身柄を確保できていない、と言うことだろう。あの男が一緒にいれば当然のことだろうが、と少しだけ苦い思いで付け加える。
 自分だって、その位は出来るはずだ。
 しかし、キラが選んだのはラウだった。
 彼女の敵であった人間。それなのにどうして……と思う。しかし、それを問いかけても、キラは答えをくれない。
「……ラクスやカガリはよくて、俺はダメなのか?」
 自分だって、彼女を想う気持ちは負けていないのに。そう続ける。
「俺が、カガリを選んだから?」
 それとも、といつもと同じ事を考えてしまう。それが正しいのかどうか、自分ではわからない。
「……でも、カガリは……」
 別の意味で好きだ。いや、好きだった……と言った方がいいのか。どちらが正しいのか、今の自分にはわからない。
 しかし、元のように過ごせれば、答えを出せるのではないか。
 そのためには、キラの側に行けるように努力しなければいけない。
「……まずは、あいつを守らないと」
 この呟きと共にアスランはアクセルをさらに踏み込んだ。

 そのころ、ミネルバにはストライク・ルージュが接近していた。
「私は、カガリ・ユラ・アスハだ。家のキラとラウが無事かどうか。まずはそれだけを確認させて欲しい」
 そちらに避難したと聞いている。そう告げれば、即座にモニターに映像が映し出された。
『お久しぶりです、アスハ代表』
 言葉を返してくれたのはグラディスだ。
『お二人ともご無事でここにいますわ』
 そう言いながら、彼女は少し体の位置をずらす。そうすれば、キラと彼女を守るように立っているラウの姿が確認できた。
「そうか。保護してくれてありがとう」
 カガリはほっとしながらこう言い返す。
「で、どうする? 先にルージュで戻るか?」
 アークエンジェルに戻れば戻ったで、いくらでも対処のしようがある。そして、あれが来てもキラに近づくことも出来ないだろう。
『カガリ?』
 本気なの、とキラは聞き返してくる。
「半分はな。どちらにしても、お前次第だ」
 ミネルバにいるというのであれば、乗艦許可が欲しい。そうすれば、戦闘が終わった後にルージュで戻れる。そう付け加えた。
「三人乗りだときついだろうが、仕方がない」
 これが自分とキラとラクスと言った組み合わせならば妥協できる範囲だろう。しかし、ラウでは鬱陶しいかもしれない。
『それに関しては我慢してもらうしかないだろうね』
 同じ事を考えていたのだろう。ラウが苦笑を浮かべながらそう言い返してくる。
『どちらにしても、そのままではお話ししにくいでしょう。許可を出しますので、着艦してください』
 アスランが戻ってくるかもしれないし、とグラディスは付け加えた。
「それはそれでいいタイミングだな」
 ミリアリアとの約束が果たせそうだ、とカガリは笑う。
「あいつが戦場に出なくても支障がないなら、もっといいが」
 流石に、この状況では無理ではないか。ならば、ねらい目は戦闘が終わってからか。そんなことを考える。
『それについても、話をさせて頂きましょう』
 にっこりと微笑むグラディスに、カガリは頷いて見せた。



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