アークエンジェル内に警報が鳴り響く。
「何があった!」
 言葉とともにカガリはブリッジに飛び込む。そこには既に、バルトフェルド達も顔を見せていた。
「キラとラウさんが襲われているそうです。地球軍に」
 ラクスが冷静な口調で言葉を返してくる。
「ただ、今はザフトの方々とご一緒しているそうですので、そちらに関しては心配いらないはずですわ」
 決して地球軍にキラを渡すはずがない。その言葉にカガリも頷く。その上、彼女の側にはラウがいるのだ。  そう考えて、別の存在も思い出す。
「そう言えば、あいつもいたな」
 キラに関してのみ厄介な存在になる人間が、とため息をつく。
「いっそ、私も出撃るか」
 ストライク・ルージュで、とカガリは口にした。そのまま、キラを連れてくればいいような気がする。
「やめておけ、と言いたいが……ルージュなら、いざとなればキラが使えるな」
 小さな声でバルトフェルドが呟く。
 設定さえ変えれば、彼女ならその性能を十二分以上に引き出せるだろう。そうなれば、地球軍には早々にお引き取り頂けるはずだ。
「キラが使っていたOSのバックアップは残っているのか?」
 そう言いながら彼はマリューへと視線を向けた。
「マードックが持っているはずですわ」
 用意させましょうか、と彼女は聞き返してくる。
「頼む。ムラサメ隊も出撃準備をさせておいてくれ」
 自分も出撃するが、大丈夫か……とバルトフェルドは問いかけた。
「私たちも追いかけますから」
 合流してしまえば危険は少ないだろう、とマリューは言い返す。
「本当なら、さっさとあちらに入港してしまえばよかったのでしょうけど……目立ちますからね」
 この船は、と彼女は続けた。
「それも仕方がないがな」
 さて、とバルトフェルドはきびすを返す。
「出撃の準備をするぞ!」
 この言葉に、ブリッジに緊張が走る。しかし、それもある意味なれたものだ。そう考えながら、カガリも体の向きを変えた。
「気をつけてね、カガリさん」
 即座にミリアリアがこう声をかけてくる。
「大丈夫だ」
 自分はキラを迎えに行くだけだから、とカガリは言い返す。
「状況によっては別のこともするかもしれないがな」
 あれの顔を見れば、とカガリは付け加えた。
「許容範囲でしょう」
 まぁ、お手柔らかに……と彼女は言い返す。でも、やるなら一発であれを沈めてね……と続けるあたり、彼女もアスランにはこだわりを持っているのか。そう考えたところで、あることを思いだしてしまった。
 彼女の恋人を殺したのはアスランだったな、と。戦争中だったとはいえ、やはり割り切れるものではないだろう。しかも、それもキラがらみだったような気がする。
「顔を見たら、ついでに文句も言ってやるか」
 不実な恋人をなじることは誰も咎めないだろう。そう言って笑う。
「任せるわ」
 ミリアリアのこの言葉を背中に、カガリは歩き出す。
 通路に出れば、バルトフェルドが待っていた。
「遅いぞ」
 そう口にする彼の目が笑っている。
「とりあえず、お前は向こうに着いたらキラと一緒にいろ。後のことはあの男が指示を出すだろう」
 カガリもそれに従え、と彼は続ける。
「外の連中は俺が指示を出す」
 この言葉に、彼女は頷いて見せた。
「ラウの経験は確かだからな。キラのことを優先して判断を下すし……」
 それが多少気に入らないが、と彼女は続ける。
「それはあきらめろ。俺もあきれているんだから」
 本当に、変われば変わるものだ。そう言いながら大股に歩き出す。
「でも、そう言うところは嫌いじゃないんだろう?」
「不本意だがな」
 そう言う彼にカガリは苦笑を返した。



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最遊釈厄伝