「間違いなく、あの人だった、と思います」 しかし、とレイは続ける。 「アスラン・ザラの顔を見ても何の反応も示しませんでした」 それが記憶がないからか、それとも別の理由からなのかは自分にはわからなかった。レイはそう締めくくった。 「おそらく、本人だと思うのだがね」 ラウがため息とともにそう告げる。 「ラウさん……」 「顔に大きな傷があったからね。それに、あの時の様子から判断をして大けがを負ったのは間違いない」 その時に記憶を失ったか……失わせられたか、だろう。彼はそう続けた。 「マインドコントロール、か」 ため息とともにギルバートが口にする。 「おそらく、な。あの男が身につけていた技量は連中にとっても魅力的だろう」 あちらもプラントと同じで優秀な兵士が不足しているはずだ。それに、とラウは続ける。 「キラ達に対しても、あの男の存在は有効な手札になる」 その存在に気付けば、彼女たちは戦うことにためらいを抱くのではないか。いや、そうでなかったとしても心を痛めるのは想像がついたのだろう。 「実際に、今、君は悩んでいるようだしね」 「……ラウさん」 彼の言葉に、キラは困ったような表情を作る。 「それが悪いとは思っていないよ。むしろ、そう言うところも好ましいと考えている」 だが、そんなキラの気持ちを利用とする者達は許せない。彼はそう言いきった。 「利用、ですか?」 シンがおずおずと問いかけている。 「君は?」 紹介をされていないからだろうか。ラウが不審そうな視線を彼に向けた。 「シン・アスカ、です」 「インパルス――新型のパイロットだよ、彼は。オーブからの移住者でもあるね」 さらにギルバートがこういう。 「あぁ、あの機体か」 ラウにはその方がわかりやすいと判断したのだろう。 「……オーブでお会いしましたよね?」 ふっと思い出した、と言うようにキラがシンを見つめた。 「はい」 どこかほっとしたような表情でシンはそう言い返す。 「あぁ、君とラクス嬢が話していたのは彼のことだったのか」 ラウも思い出したというように頷いてみせる。 「レイの友人だよ。これからが楽しみだね。色々と」 ギルバートの言葉に、シンの方が困ったような表情を作った。そのまま、助けを求めるかのようにレイへと視線を向けてくる。 「とりあえず、シンをからかうのはやめておいてください」 ため息とともにレイは言葉を口にした。 「それに……早々に対処を取らないと、彼が押しかけてきますよ?」 今もハイネの目を盗んで押しかけてこようとしているのではないか。そう続ければ、ギルバートもラウも苦笑を浮かべる。 「あぁ。その問題があったね。しかし、どこに彼等が潜んでいるか。それもわからないとなると、迂闊にアークエンジェルに帰すのはどうだろうか」 途中で襲われては大変だ、とギルバートは言う。 「オーブの軍人達がいるからね。彼等と合流できれば大丈夫だと思うが」 それにラウがこう言い返してくる。 「それでも不安だよ。いっそ、こちらからも護衛を出すか」 ギルバートはこう言いながらギルバートはレイ達へと視線を向けてきた。 「彼等ならいいだろう。そうだね。MSの使用も許可しよう」 それならば大丈夫ではないか。彼はそう言った。 「そこまでして頂かなくても……」 キラが驚いたように言葉を口にする。 「こちらに来てもらったのはこちらの都合だからね。無事に帰ってもらうのもこちらの義務だよ」 だから気にすることはない。それに、自分がそうしたいのだ……とギルバートは笑う。 「そう言うことだから、レイ」 「はい。直ぐに準備をします」 レイはそう言って頷いてみせる。そのままシンへと視線を流せば、彼も同じような表情を作っていた。 「とりあえず、着たときとは違う車を使って、合流場所に行きましょう」 シンはいつでもインパルスででられるようにして欲しい。そう言えば、彼はしっかりと頷いて見せた。 |