レイが自分に頼みたいことは、議長の護衛だった。もちろん、彼も一緒だ。そして、もう一人、ハイネ・ヴィステンフルスも来るという。
「要するに、アスランが押しかけてくるかもしれないから、顔を知っている人間がいた方がいいってことだだろう?」
 レイは議長に同席をするのだろうから、とシンは続ける。
「あぁ。そう言うことになるだろうな」
 悪いな、とレイは言い返してきた。
「気にするなって」
 こういう任務の方が気が楽だ、と言ってしまってはいけないのだろうか。だが、実際に、そう感じることは否定できない。
「アスランも、とりあえずは戻ってこないと思うが……」
 だが、アスランだけに油断が出来ない……とレイは付け加える。
「あの人達が来ることに気付いている可能性も否定できないしな」
 本当に厄介だ、と彼はため息を吐いた。
 確かに、アスランならやりかねない。だが、と思いながらシンは口を開く。
「……会わせたくないのは、お前と議長の意見か?」
 ちょっと気になっていた疑問をぶつける。
「いや……あの人達の希望だ」
 だが、戻ってきた言葉は少し意外なものだった。だが、アスランの言動を思い出せば納得できるかもしれない。
「あれがいると余計な口出しをしてきて、話が進まない……と言うのが表向きの理由らしい」
 あぁ、やはり……と思ってしまう。
「あくまでも、自分の意見が正しいと考えているんだ、あいつ」
 誰が相手でも、と考えると頭が痛い。
「そして、無意識に相手を傷つけるセリフを口にするらしい」
 今のキラには、それがマイナスにしかならない。だから、アークエンジェルの者達は心配しているのだろう。そうレイは言う。
「体調でも悪いとか?」
 記憶の中のキラは、華奢としか言いようがない体形をしている。それで、あれだけの戦闘をこなせるのか。そう考えれば、こういう結論が出てきても仕方がないだろう。
「……いや。アスランがあの人を傷つける言葉を口にしただけだ」
 彼の顔を見れば、それを思い出すだろう。その上、あの言動だから、とレイは言い返してきた。
 きっと、自分が知らない何かを彼は知っているのだろう。だが、それはレイの秘密ではなくキラのそれだ。当事者ではない自分が問いかけない方がいいような気がする。
「まぁ、あちらがそう希望して議長が認めたんだから、アスランが文句を言えるはずはないよな」
 もっとも、それを本人が理解しているかどうか。
 理解していても『自分は特別だ』ぐらい言いそうな気もする。あるいは、会談が終わった後に押しかけてくるか、だ。
「だといいんだがな」
 はたして、ギルバートの言葉でも彼の耳に入っているかどうか。かなり疑問だ。そう言われて、本気で頭を抱えたくなる。
「あいつ、なんでザフトに復帰したわけ?」
 むしろ、オーブに戻っていた方がよかったのではないか。
「オーブから『戻ってくるな』と言われたらしい。既にセイランが国政を掌握していたから、らしいが……そうでなくても、しばらく戻らなくても構わない、ぐらいは言われていそうだぞ」
 この言葉に納得できてしまうのはどうしてか。
「……つまり、あいつは昔から自分ルールと失言で周囲をあきれさせていたってことか」
 それなのに、とシンはため息を吐く。
「俺たちよりも経験が豊富で、実力があるんだよな」
 気に入らない、と彼は呟いた。
「それは……悔しいが、仕方がない」
 自分たちよりも彼等の方が早く生まれた。その事実は変えようがない。そして、アスランがプラントでも特に優秀な存在であったことも、だ。
「いずれ追いついて追い越せばいい。今だって、二人がかりなら何とでもなるしな」
 そう言ってレイは笑った。
「確かにな」
 二人なら何とでもなるか、とシンも頷き返す。
「ともかく、今回の会見は無事に終わらせたい。その結果、アスハ代表を中心とする親コーディネイター派との関係がどうなるか、決まるだろうからな」
 そのためにも成功させなければいけない。
 レイのこの言葉に、シンも頷いてみせる。
「そして、さっさとこの戦争を終わらせたいよな」
 続けてこういう。
「あぁ、当然だ」
 そうすれば、きっと、言い方向に進む。レイもまた、何かを決意するかのようにこう口にした。



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