ソナーがこちらに向かってくる物体を感知した。
「どうやら、見つかったようだね」
 忌々しそうにラウが呟く。その間にも彼は手早くヘルメットを装着した。かつてはそんなものを必要がないと考えていたが、今は違う。自分に何かあればキラがどのような感情を抱くか、わかっているのだ。
「仕方がないな」
 そんな彼の隣では、バルトフェルドが同じように身支度を調えている。
「キラは?」
 手を止めることなく彼はこう問いかけてきた。
「フリーダムのコクピットですよ」
 一足先に着替え終わったから、そこで待機をしている。流石に、自分たちに混じって着換えをする気持ちにはなれなかったらしい。ラウはそう続ける。
「私一人ならば、気にしなかったのかもしれないがね」
 いや、キラのことだから、ここでは嫌がるかもしれない。
「あぁ。あの子も女の子だったね」
 カガリと一緒にいると、時々その事実を忘れてしまう……とバルトフェルドは苦笑を浮かべた。
「あの子はまた別の意味で問題だが……あぁ、あの男の影響、と言うのもあるかもしれないね」
 ひょっとしたら、セクハラをされたのか。そう言いながら、デッキの方へと歩き出す。
「鷹さんか……やるかもな、彼なら」
 まぁ、彼なりの理由があったのだろうが。そう言って彼は笑う。
「そうでなければ、ただではすまさないがね」
 もっとも、今更どうすることも出来ないが。それが少し残念かもしれない。そんなことを考えてしまう。
「マードック」
 状況は、とバルトフェルドが問いかけた。
「とりあえず、まだこちらは見つかってないようですぜ」
 不必要な音を出さないようにしているところだ、と彼は言い返してくる。
「でも……時間の問題でしょうな」
 相手の探査範囲がどれだけ広いかはわからない。だが、動いている以上、こちらと接触する可能性がある。
「バッテリーが切れてくれることを祈るだけです」
 真顔で彼はそう付け加えた。
「難しいだろうがな」
 そのあたりのことは連中もわかっているはずだ。バルトフェルドがそう言った瞬間だ。警報が鳴り響く。
「見つかったか」
 仕方がない、とラウは呟く。
「そうだな。キラだけを放り出すわけにはいかないし……かといってカガリを出撃させるのはまずい」
 ムラサメは海中での戦闘が苦手なんだが、と言いながら自分の機体へとバルトフェルドは向かった。
「それでも、海上に出るまで、あの子のフォローは出来るでしょう」
 もちろん、アークエンジェルも、だ。
「確かにな」
 雑魚を近づけないように頑張るか。この言葉とともにバルトフェルドはコクピットへと姿を消す。
「さて……あまり数が多くなければいいのだが」
 少なければ、それだけ楽なのだが……とラウは口の中だけで呟く。そのまま、自分もコクピットへと体を滑り込ませる。
 シートに腰を下ろすと同時に、フリーダムが発進のために移動していくのが見えた。
「キラ。無理はしないようにね」
 回線を開くとそう呼びかける。
『わかっています』
 即座に彼女から言葉が返ってきた。
「では、気をつけていっておいで」
 直ぐに追いかけるから、と続ければ「はい」と言葉が返される。
 そのまま、カタパルトへとフリーダムは消えていった。
『先に行くか?』
 代わりにバルトフェルドがこう問いかけてくる。
「そうですね」
 その方が安心できる、と言外に言い返す。
『じゃ、キラのフォローは任せた』
「わかっていますよ」
 苦笑と共にラウはムラサメを移動させる。そして、フリーダムの後を追うように発進させた。



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