最初に異変に気付いたのは誰だっただろうか。
「何があった?」
 違和感を感じてそう問いかけたものがいた。
「わからない。ただ、微妙にシステムが重いような気がする……」
 だが、大丈夫だろう。そう付け加えられたときだ。いきなり、目の前のモニターから明かりが消える。
「……どうした?」
「何があった?」
 口々に疑問があがった。だが、その答えを知っているものはいない。
「わからない……おそらく、ウィルスだと思うが……」
 そう答えながらも、口にした人間には事情が飲み込めていた。
 先日の戦いの時、カガリと共に介入してきたのはフリーダムだ。そして、そのパイロットがどのような才能を持っているか。あの時の戦いのおりに、クサナギのクルーとして乗り込んでいた彼は聞かされていた。
 おそらく、彼女たちは自分たちが戦わずにすむ方法はないか、と考えて実行に移したのだろう。
 しかし、それを口に出すことはしない。
 ユウナ・ロマ・セイランとカガリの違いは、将兵の命を駒と捕らえていないことだ。それは彼女自身が戦場へ身を置いていることと無関係ではないはず。
 どちらが好ましいか。それは言うまでもないことだ。
「……上がその意図を正確に受け取ってくれればいいんだが……」
 代わりにこう呟く。
 カガリのあの叫びを聞いてしまっては戦うという選択肢を選びたくない。
 だが、自分たちは軍人だ。命令されればどのような理不尽なものでも従わなければいけない。
「カガリ様のためにも」
 もっとも、それを認められないのがセイランなのだろうが。心の中でそう呟くと、彼は小さなため息を吐く。
「システムと全て入れ替えないと、復旧は不可能だ、と報告してくれ」
 自分一人の手には余る、と近くにいたものに彼は告げた。

 オーブ軍のシステムにウィルスが侵入した。
 その報告に、彼は苦笑を浮かべる。
「まさか、そう言う手段を執られるとはね」
 予想していなかった。そうとしか言いようがない。と言うよりも、普通は考えつかないのではないか。
「よっぽど、腕のいいプログラマーがあちらにいるようだな」
 それが誰なのか。何故か知っているような気がしてならない。心の中でそう付け加えた瞬間、何かがそれを遮ろうとする。それが耐え難い不快感をもたらした。
「大佐?」
 どうかなさいましたか? と艦長が問いかけてくる。
「何でもない」
 彼等に不安を与えてはいけない。その思いで彼はそう言い返した。
「それよりも、アビスを出撃させろ。おそらく、近くの海底にアークエンジェルがいる」
 今回の一件も、連中が絡んでいるはずだ。そう付け加える。
「わ、かりました」
 即座に彼はこう言い返してきた。
「それと、ザフトの動きにも注意しておけ」
 きっと、これを好機と見て動き出すだろう。
「後は、お坊ちゃん次第かな」
 連中がさっさとウィルスを駆除して動けるようになってくれればいい。そうでなければ、見捨てて自分たちだけ逃げるしかないのだろうか。
 だが、そうなると、後々厄介なような気がする。
「まぁ、出撃できるように準備させておいてくれ」
 不幸中の幸いなのは、ここがあちらの本拠地から離れていると言うことだろうか。何をするにしても対処をするための時間がある。
「了解しました」
 即座に彼等は行動し始めた。
「さて……どうやって状況を立て直すか……」
 まずはそれを考えないといけないか。そう呟きながら彼は状況を確認するためにオーブ軍へと連絡を入れるよう、指示を出した。



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