カガリはおいてきた方がよかったのではないか。キラはそう思わずにいられない。
「……ラクス……カガリも落ち着いて」
 ね、と二人をなだめるように口を開く。
「一刻も早く地球に戻ろうとするなら、確かに、これが一番いい方法だっただろうな」
 そして、バルトフェルドもこう言ってくる。
「問題なのは、あいつが何を誤解しているか、と言うことだが」
 と言うよりも、何か根本的なところで認識違いをしているのではないか。彼はそうも続けた。
「……あいつは、どうやってここに連絡を?」
 カガリは顔をしかめながら疑問を口にする。
「ミリアリアさん経由で連絡が来たの」
 マリューがため息とともにこういった。
「どこかで接触を持ったのだ、と思うけど……」
「ミリィは、今、カメラマンだから……きっと、戦闘の情報を掴んだんだと思う」
 そうでなければ、ザフトの基地の近くにいたのかもしれない。キラはそう告げる。
「もし、ミリィが困ってたら……って思って、非常用のアドレスは渡してあったから、それを使ったんじゃないかな?」
 しかし、できれば別の時に使って欲しかったが、とキラはため息を吐く。
「そうですわね」
 しかも、アスランのことだ。彼女に無理を強いたのではないか。ラクスはそう言って顔をしかめる。
「しかも、本人はそれを無理強いしたとは認識していない、と」
 あり得るな、とカガリまでもがため息を吐く。
「そう言うところも、彼の認識違いの一部なのだがね」
 困ったものだ、とラウまでもが口にした。
「いくら矯正しようとしても、本人がそれを認識できていない以上、難しいだろう」
 さらに、彼は続ける。
「だが、いつまでも放置しておくわけにはいかないだろう」
 こんなことをしてくれているのだし、とバルトフェルドが言った。
「放っておくと、さらに厄介なことをして貸してくれそうだしね」
 と言うわけで、どうする? と彼はキラに視線を向けてくる。
「会うしかないでしょうね」
 このままでは、ミリアリアに何をしてくれるかわからないから……とキラもため息を吐く。
「個人的に、二人を一緒にしておきたくないですし」
 トールのことがあるから、と言外に付け加えた。彼女がまだ、そのことに引っかかりを持っていると知っているし……と続ける。
「……まだ、割り切れないか、あいつも」
「と言うよりも、アスランがまったく気遣いをしないだけですわ」
 だから、無意識に彼女の古傷をえぐっているのではないか。ラクスがそう言った。
「まったく、あいつも……」
 困った奴だ、とカガリはため息を吐く。
「いい加減、一度見限ってみません?」
 二人とも、とラクスは口にする。
「そうすれば、ショックで少しはまともになるかもしれません」
「……逆にたがが外れるかもしれないぞ」
 悪化する可能性がある、とカガリは言い返す。
「まぁ、その時は完全に見捨てるだけのことだ」
「確かに。そうなったら、アスランの存在は百害あって一利なし、だろうからね」
 キラにとって、とラウも頷く。
「とりあえず、様子を見て……だな」
 どちらが行く? とバルトフェルドはラウに問いかけた。
「私が行った方がいいと思うが……バルトフェルド隊長には、万が一の時にアークエンジェルとラクス嬢を守って貰わないといけないでしょう」
 キラとカガリであれば、自分でも何とかなる……とラウは言い返す。
「それに……その方が都合がいい状況になるかもしれない」
 あるいは、と彼が続けたところから、何か気になることがあるのかもしれない。
「そうだな。そうするか」
 ラウであれば、万が一の時にフリーダムを操縦して戻ってこられるだろう。もっとも、コクピットは狭いかもしれないが……とバルトフェルドが笑う。
「最悪、四人か?」
 さらに付け加えられた言葉にカガリもいやそうな表情を作った。
「……まぁ、そうならないことを祈るがね」
 アスラン次第だろうな、とバルトフェルドは頷く。
「まぁ、そうなったら、あいつの使っている乗り物を貰えばいいだけのことだ」
 無事に帰れると思うな……と言うカガリは雄々しい。しかし、いいのだろうか、とキラは首をかしげてしまった。



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