一条の光が、その場を切り裂いた。 「敵の援軍か?」 だが、その光が切り裂いたのは、地球軍の艦の主砲だった。 ならば、味方なのか。 こう考えて、直ぐにシンはそれを否定する。それならば、何故、ミネルバをはじめとする味方が混乱を隠せないのか。 つまり、敵でもなければ味方でもない連中が乱入してきた、と言うことなのか。 しかし、この場にそんな連中がいるのか、と言う疑問がわき上がってくる。 その答えは直ぐに与えられた。 『私は、オーブ代表首長、カガリ・ユラ・アスハ!』 この言葉とともに姿を現したのは、ストライク・ルージュ。その肩に描かれた紋章から間違いなく本物だ、とわかる。 しかも、それだけではない。 ストライク・ルージュを守るかのように蒼い翼を持った機体が姿を見せる。 「……フリーダム……」 歯の隙間から、シンが絞り出すようにその名を呼んだ。 『オーブ軍に継ぐ。至急、この場から撤退しろ』 その間にも、カガリの言葉が周囲に響いている。 「何、世迷い言を!」 反射的にそう叫ぶ。そのまま、銃口を彼女へ向けようとした。 『シン!』 だが、それをレイが制止する。 「なんでだよ!」 自分たちの協力をしないのであれば敵だろう、とシンは言い返す。 『まだ、完全に敵対しているわけではない。損害を受けたのは、あくまでも地球軍の艦艇だ』 そして、フリーダムも他の機体も、 だから、彼等の出方をもう少し見守ろう。それが上からの指示だ、と彼は続けた。 「だけど……」 そう考えていない者が多いのではないか。 三年前に、身内や親しいものをあれらの機体に殺されたものだっているだろう。その者達もそれを認めているのか。 シンがその疑問をぶつけようとしたときだ。 『それは偽物だ! だから、さっさとたたき落とせ』 悲鳴のような声が周囲に響き渡る。 「……何だ?」 いったい、どうして……とシンは呟く。 『今、彼女に出てきて貰っては困るんだろう。セイランは』 オーブを乗っ取ろうとしているらしいな、とレイが言う。 『だからこそ、カガリ・ユラ・アスハが出てきたんだろうな』 そして、プラント側は彼女を失えない。それは、きっと、彼女がコーディネイターを許容しているからだろう。 だが、それが忌々しい。そう思ってしまうシンだった。 目の前で、次々とM-1アストレイとムラサメが撃ち落とされていく。しかし、それはあくまでも推進力を殺がれただけで、パイロットの命に支障はないだろう。 しかし、だ。 「何を考えているんだ、お前達は」 そのせいで、キラがどれだけ追い込まれているのか。それは欲知っているはずだろう、とアスランはストライク・ルージュをにらみつける。 「あなた達が付いていて、それですか」 その視線を側に付き従っている二機のムラサメへと向けた。おそらく、それにラウとバルトフェルドが乗り込んでいるはずだ。 「どうして、止めてくれなかったんです」 でなければ、彼女を出撃させなければいいのに。 フリーダムに乗り込まれてしまえば難しいかもしれないが、だが、その前ならばいくらでも止められただろう。言っては何だが、生身のキラはナチュラルであるカガリやマリューよりも弱々しい存在なのだ。 それとも、そうできない理由があったのか。 「……確認しないと……」 しかし、どうすればいいのだろうか……とアスランは悩む。 「こうなると、地球に戻るためにザフトに復隊したのは失敗だったかもしれないな」 キラはともかく、カガリは怒るだろう。 「一発、殴られるだけですめばいいが」 だが、それに関しては覚悟しておこう。 問題は、彼等の真意を調べることだ。 「何とか、連絡を取れればいいんだがな」 どうすればいいだろう。アスランはそれを考えていた。 |