「それに関しては、キラが悪いね」 こう言ってきたのはマリューではなくわきで聞いていたバルトフェルドの方だった。 「バルトフェルドさん?」 何故、とキラは聞き返す。 「しかし、あの男にも『嫉妬』という感情があったのか」 本当に可愛い性格になったものだ、と彼は続ける。 「嫉妬、ですか?」 しかし、キラには彼の言葉が信じられなかった。まさか、彼がそんな感情を抱いているとは思わなかったのだ。 それに、と思う。 「でも……相手はムウさんです」 お互いに恋愛感情なんてなかった、とキラは言外に付け加える。 「まぁ、複雑なんだよ、男心も」 キラにはまだわからないかもしレないが、と彼は苦笑を浮かべた。 「でも、それでいいのよ」 くすくすと笑いながらマリューがキラの肩に手を置く。 「彼もだからどうして欲しい、とは言わないでしょう?」 それに、ラウの方が年上なのだから、そのあたりのことは自分で何とかして貰わないと……と彼女は続ける。 「もっとも、男の人なんて、いくつになっても子供みたいなものだけど」 さらに重ねられた言葉に、キラは反射的にバルトフェルドの顔を見てしまう。 「まぁ、否定は出来ないけどね……」 しかし、面と向かって指摘をされると答えに困るね……と彼は苦笑を浮かべた。 「……でも、バルトフェルドさんと話をしていても、ラウさんは何も言いませんけど……」 何故、ムウではダメだったのか……と不思議に思う。 「鷹さんだから、だろう。色々な意味で複雑な関係だったようだからね」 しかし、それをマリューに向けずにいてくれてよかったかもしれない。バルトフェルドは真顔でそう口にした。 「確かに……でも、よく似ているからこそ違いがよくわかりますわ」 そして、自分が好きなのは彼ではなくムウだとわかる、とマリューは微笑む。 「……まぁ、そう言いきれる君を見ているのはいやではないがね」 ちょっと複雑かな、とバルトフェルドが言ってくる。それにマリューは困ったような笑みを返した。 「あらあら。珍しいですわ」 「確かに。バルトフェルド隊長がラミアス艦長を困らせるとは」 そう言いながらラクスとカガリが歩み寄ってくる。 「困らせていたわけではないよ。ただ、キラの相談に乗っていただけだ」 なぁ、とバルトフェルドが即座に同意を求めてきた。それに苦笑を浮かべつつキラは頷いてみせる。 「相談なら、何故、私にしない!」 その瞬間、カガリがこう詰め寄ってくる。 「だって……」 カガリの恋人はアスランだから、参考にならない……とキラは小声で言い返す。 「まぁ、そう言うことでしたの。でしたら、確かに参考になりませんわね」 アスランでは、 「……それが未だにあれを見捨てられない理由の一つだからな」 下手に放り出すと、間違いなくキラの邪魔をしかねない。それよりは自分が手綱を付けておいた方がいいだろう。ため息とともにそう言うカガリに、思わずみんな吹き出してしまった。 「それで、お前は何を調べているんだ?」 どうせ、キラに知られたくないことだろうが……と口にしながらバルトフェルドが歩み寄ってくる。 「……ロゴスのことですよ」 「ロゴス?」 何だ、それは……と彼は顔をしかめた。 「ブルーコスモスの黒幕、ですね」 以前、たまたまその情報を掴んではいたのだが、あのころはそれよりも優先したいことがあったから放置していたのだ。 「キラが知りたがっているので。もっとも、連中が何をしているのかをあの子には知らせたくない」 だから、自分が調べているのだ……と説明をする。 「なるほど」 苦笑と共に彼はラウの肩越しにモニターをのぞき込んだ。 「……確かに、キラには知られない方がいいな、これは」 それどころか、できれば他の面々には知らせたくない。そうも続ける。 「しかし、知っておかなければいけないでしょうね、我々は」 だから、バルトフェルドも協力をしてくれると嬉しいのだが……とラウは口にした。 「仕方がないな」 これでは、と彼も頷く。 「……しかし、連中がどう動くか。それが一番の問題だな」 確かに、それが一番厄介かもしれない。それによって、自分たちがどう動くか決まるだろう。ラウもそう考えていた。 |