「ようこそ、アスラン・ザラくん」 目の前の人物は笑いながらこう言ってくる。 「……アレックス・ディノです」 言っても無駄かもしれないが、と思いつつ、アスランは訂正の言葉を口にした。 「では、アレックス君」 笑みを深めながら、ギルバートは口を開く。 「今回、君が面会を求めてきた目的は何なのか。改めて教えてくれるかね?」 どう考えてもからかわれているような気がする。そうい感じるのは自分の錯覚だろうか。 ただ、これだけは言える。 彼はラウ――と言うよりはかつて、自分の上司だった頃のクルーゼ――と同じ人種だ。下手な反応を返しては揚げ足を取られかねない。 「とりあえず、プラントが今回の件をどのように捕らえているのか、確認してこい……と言うことですのでその許可をいただこうかと」 これは表向きの理由だ。もちろん、それだけではない。そんなことを考えていたせいか。自分が余計な一言を付け加えたことにアスランは気付かなかった。 「……とりあえずは?」 他には何かあるのかな、とデュランダルは問いかけて来る。 「状況次第で変わってくるかと」 まさか、本当のことを言えないし……と思いながら言い返す。 「……なるほど、ね」 そう言うとにしておこうか、と彼は笑った。 「まぁ、君の申し出はとりあえず承っておこう。それを許可するかどうかは、しばらく考えさせてくれるかな?」 「当然のことです」 こちらはお願いするだけですから、とアスランは言い返す。もっとも、心の中では、やはり類友だったかと呟いていた。 きっと、彼は自分に与えられたもう一つの目的が何であるかを気付いている。気付いていてこんな態度を取っているに決まっているのだ。 しかし、相手はあくまでも最高評議会議長だ。それを表情に出すわけにはいかない。 「と言うことはやはり、彼は《彼》なのかな?」 にこやかな表情でこう問いかけられる。 「ご質問の意図がわかりかねます」 ひょっとして、これもセイランの嫌がらせの一部なのだろうか。それとも、彼のか。どちらなのだろう……と悩むアスランだった。 だが、まだアスランの置かれている立場の方が気楽だったかもしれない。 「……カガリと連絡が取れない?」 キラの言葉に、バルトフェルドが思いきり顔をしかめた。 「どういうことなのだい、キラ」 ラウも即座にそう問いかけてくる。 「本邸の方に戻ってきていないそうです。ひょっとしたら、セイランに拉致されたのではないか、とマーナさんが」 何か、結婚式の準備が進んでいるみたいだし……とキラは続けた。 「そう言う手段にでましたの」 あきれますわね、とラクスが口にする。 「とりあえず、今回の結婚式は阻止しないといけないのだろうが……」 どうするかだな、とバルトフェルドは呟く。いや、阻止するだけならば簡単だろう。問題はその後のことだ。 「私たちのことでしたら、心配はいりません」 マルキオが微笑みながら口を挟んでくる。 「メガフロートが完成したそうです。子供達とヤマト夫人と共にそしてに移動すれば、彼等でも迂闊に手出しは出来ません」 だから、キラ達は自分たちがしたいことをして欲しい。そう彼は続ける。 「……キラ。君はどうしたいのかな?」 君の望みならば、出来る限りのことをするよ? とラウも口にしてくれた。 「……僕は……どうしたいのかは、まだわからないけど……でも、オーブが中立を保てなくなるのは、間違っていると思うから……」 それだけは阻止したい。 たとえ、誰に恨まれても、だ。 「でも……それが正しいのかどうか、わからないけど……」 自分が動くことで、また、世界が混乱の渦に巻き込まれるかもしれない。だが、それでもそうしなければいけないような気がするのだ。 「キラは間違っておりませんわ」 だから、安心していい。ラクスはそう言って微笑む。 「世界を二つにわけてしまってはいけないのです。だから、第三の選択肢を選ぶ余地を作らないと」 カガリには怒られるかもしれないが、と彼女は続ける。 「確かに……」 でも、それでもやらないといけないんだ。キラがそう言えば他の者達は同意をするように頷いてみせる。 「さて、忙しくなるな」 バルトフェルドのこの言葉を合図に、皆が行動を開始した。その表情がどこか楽しげだと思えるのは錯覚だろうか。 「大丈夫だよ、キラ。君は間違っていない」 そっとラウが囁いてくれる。 「君が間違っていると思ったときには、きちんと指摘してあげるよ」 彼のこの言葉にキラは小さく頷いて見せた。 |