気は合わない。むしろ、直接顔を合わせない方がお互いのためかもしれない。
 だが、それ以上にこの男以上に今の相談事にふさわしい相手を見つけられない、と言うのの事実だ。マリューが立ち会ってくれるから、何とかなるだろう。ラウは心の中でそう呟く。
「……ザラ派、ね」
 彼の話を聞き終わったバルトフェルドはため息とともにそう言う。
「確かに、厄介な連中だな」
 まだ、二つの種族の対立を望んでいるのか……と彼は続ける。
「不本意だったが、今回は君に行って貰ってよかったかもしれない」
 アスランであれば、彼等に同情をしていたかもしれない。その場合、ユニウスセブンの破砕作業は無事に終わっただろうか。何よりも、あそこには彼の母が眠っているのだ。
「それとは別の問題が持ち上がったが……」
 あそこにあの二人がいたのが問題だったね、とラウは付け加える。
「ギルバートのことは最初から覚悟していたが……あのオコサマ達は厄介だよ」
 レイは自分とキラのことを探ろうとするだろう。だが、彼はまだ、直接的な行動を取らないだろうが。
 だが、シンはどうだろうか。
「いったい、彼は何故、アスハとフリーダムのパイロットを恨んでいるのだろうね」
 家族を失ったらしい。それに関しては、同情しないわけではないが、とラウはため息を吐く。
「そのような者は多い。あの時は、戦争をしていたのだから……」
 この場にいる者達もそうだ。そして、その事実が今もキラを苦しめている。自分ラウの命を救えたという事実が辛うじてあの子の精神をこの世界につなぎ止めていた。それがわかっているから、目の前の人々は自分がここにいることを許しているのだろう。
「……どちらにしても、そのオコサマをキラに近づけないようにしないといけないか」
 ただでさえ厄介なバカがこの周囲をうろついているのに……とバルトフェルドはため息を吐く。
「……アスランではなく?」
 バカ=アスラン、と言うのも何なのか。だが、それに関して二人は何も言ってこない。
「もっと厄介なのがいるだろう?」
 カガリの回りをうろついている、とバルトフェルドは笑う。
「あぁ、あれか」
 そこまで言われれば、脳内から存在を消去していた相手であろうと思い出さずにはいられない。
「君達がいない間、うるさかったよ」
 まぁ、それこそアスランが頑張って阻止していたがね……とバルトフェルドが笑う。
「番犬としては役に立つのか」
 もっとも、無意識にキラを傷つけている以上、側に置きたくはないが……とラウはため息を吐いた。
「大丈夫でしょう。ラクスさんがいますもの」
 アスランを止められるから、と今まで黙っていたマリューが告げる。
 そんな彼女にあれのことを教えるべきかどうか、ラウは一瞬悩んだ。だが、直ぐにやめようという結論に達する。不確実な情報で彼女の気持ちをかき乱すのはよくないだろう。
 だが、目の前の男には告げておくべきではないか。
 いったい、いつ、何時、何が起こるかわからないのだし……と心の中で呟く。それに、彼であれば彼女やキラにも内密にしておいてくれるだろう。そう言う点では信頼している。
「それと……どうやら、あちらの艦の修理は、私たちがすることになりそうなの」
 だから、自分たちが出来るだけ注意をしておく……とマリューは微笑む。
「お願いして構いませんか?」
「もちろんよ。キラさんのためですもの」
 ラウの言葉に、マリューは即答してきた。
「後は、あいつを一人でうろつかせないことだな」
 それに関しては頑張れ、とからかうような声音でバルトフェルドが言ってくる。
「当然だね。私はあの子から離れるつもりはないし」
 もっとも、本人が自分を『いらない』と言い出さない限りは、だ。
「今回のことだって、アスランが自爆しなければあちらに足を運ぶことはなかったのだがね」
 たまたまいい結果が出ただけだ、とラウはため息を吐く。
「それに関しては、俺も同意見だな」
 次はきちんと義務を果たして貰おう、とバルトフェルドも頷いた。
「ともかく、もう少し情報を集めないと動きが取れないか」
 間違いなく、ユニウスセブンの一件は尾を引く。だからこそ、適切な判断を取れるようにしておかなければいけないのではないか。そのバルトフェルドの言葉にラウも頷く。
「大切なものを守るためなら、努力は惜しむべきではないだろうしね」
 この言葉に、バルトフェルドが意味ありげな笑みを浮かべるのがわかった。



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