流石に最新式の技術を取り入れただけのことはある。アーモリー・ワンはかなり暮らしやすいと言えるのではないか。 おそらく、ヘリオポリスと同じような事態に陥っても、ここは崩壊することはないだろう。 もっともその程度の学習能力は持っていてもらわないといけないだろうが。 そんなことを考えていたときだ。 「少し構わないかね?」 いきなりギルバートが声をかけてくる。 「何でしょうか、デュランダル議長?」 ふっと笑みを浮かべながら言葉を返す。 「君はいつから、姫の傍にいるのかな?」 その前に名前を聞かなければいけないか……と彼は続ける。そのわざとらしい口調に隠されている意図に気付かないはずがない。 「これは失礼。自己紹介がまだでしたね。ラウ・ヤマトともうします」 柔らかな笑みと共にこう言い返す。そのまま真っ直ぐに彼の顔を見つめていたのは、この名にどのような表情を作るのかを見たかったからだ。 「……ラウ・ヤマト?」 案の定と言うべきか。彼は目を丸くしている。 「アスハ代表のお側に付いたのは二年ほど前でしょうか。その前はマルキオ様の護衛をさせて頂いておりました」 その縁でカガリの護衛になったのだ。そう言う。 「そうか」 これは信じていないな。ラウは心の中でそう呟く。 「……しかし、ヤマトとは……」 この家名も彼にとっては気にかかるものなのだろう。その理由もわかっている。 さて、どう出てくるだろうか。 そう考えたときだ。 「何だ?」 低い振動が伝わってくる。それにカガリは眉根を寄せた。 だが、ラウは違う。 この振動がどのような意味を持っているのか。彼は経験上知っていた。だから、さりげなく彼女の傍へと歩み寄る。何が起きても彼女を守りきれるように、と考えてのことだ。 「……ラウ……」 「心配はいらない。あの子が悲しむからね。何があっても君には傷を付けさせないよ」 それがわかっているからこそ、皆が自分を彼女に同行させたのではないか。 「それはこちらのセリフだ」 小声でカガリが言い返してくる。 「お前が傷ついたら、私がキラに恨まれる」 それも計算しているのだろうな、と彼女はため息を吐く。 「そう思うのなら、勝手な行動は取らないでくれると嬉しいね」 君は時々暴走してくれるらしいから、と付け加えればむっとした表情を作った。だが、それ以上反論はしてこない。ある程度、自覚しているのだろう。 「……どうやら、敵が侵入しているようです。申し訳ないが、安全な場所に避難するので、ご同行頂けますかな?」 報告を受けていたらしいギルバートがこう声をかけてくる。 「我々が御邪魔にならないのでしたら」 機密に触れるわけにはいかないのだろう? と言外に聞き返す。 「ご心配なく。姫も君も、そのあたりの部分は配慮してくれるのではないかね?」 両国の友好のために、と彼は笑った。 それだけではない。さりげなく周囲をザフトのものが取り囲んでいる。カガリを傷つけずにこの包囲網を突破するのは少しきついのではないか。 「……おい……」 そう考えているラウの耳にカガリの声が届く。 「今は言うとおりにした方が良さそうだね」 いざとなれば、適当に乗り物を拝借して逃げ出せばいいだけのことだ。心の中でそう呟く。 「……仕方がないな」 ため息とともにカガリが頷いた。 「では、結論が出たところでこちらに」 ギルバートはこういうと共に歩き出す。その後を二人は付いていった。 |