「……あっ……ん、や……」
 総士の下で、一騎が大きく体をのけぞらせている。
「本当に、いや、なのか?」
 こう問いかけながら、総士は一騎のそれを指で弾く。ようやく大人になりかけたそれ――もちろん、そこを大人にしたのも総士だ――は、そんな刺激でもさらに大きくふくらんだ。
「ひぁっ!」
 同時に、彼の体が大きく跳ね上がる。それを総士は自分の体で押さえつける。
「あっ……やぁっ!」
 快感を逃す術を失ったからか。
 一騎は激しく首を横に振っている。癖のない髪の毛が、その動きに従って大きく左右に揺れていた。
「一騎、答えるんだ」
 そんな彼の耳に、総士は直接こう吹き込む。
 もちろん、この状況でこんなセリフを口にするのは無体だ、と言う思いは総士の中にもある。だが、自分だけではなく一騎もこの行為を求めてくれているのだ、という確証が欲しい。そう思ってしまうのだ。
「……やっ……も、欲しい……」
 だが、一騎の方はそれ以上の気持ちを抱いてくれていたらしい。
 ためらうことなく付け加えられた言葉がそれを教えてくれている。
「いい子だね、一騎は」
 無意識のうちに笑みが浮かぶ。
 同時に、総士自身の欲望もまた、耐えられないほどの熱を帯びた。
 しかし、これを感情のままに一騎の内へ突き入れるわけにはいかない。そんなことをすれば、彼を傷つけてしまうだろう。
「もう少し我慢するんだ……ここをちゃんとほぐさないとね」
 一騎自身の体液で濡れた指で後ろを探る。それだけで、微かにそこはほころんでみせた。少しだけ開いたそこに、総士はためらうことなく指を侵入させる。
「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 一騎の唇から甘い悲鳴が飛び出す。
「総士、そ、うし……」
 指をゆっくりと蠢かせば、彼の口からこぼれ落ちたのは自分の名前だ。その事実が総士の体をさらに熱くしていく。
「……可愛い、一騎……もっと、俺の名を呼んで?」
 そして、自分のこと以外考えないで欲しい。そんなことすら総士は心の中で呟いていた。
「……ひっ!」
 内部を探る指を増やせば、一騎は一瞬体を強張らせる。だが、指を軽く抜き差しするだけでその強張りは溶けていく。だが、逆に総士の肩にかけられた彼の指には力がこもっていった。
「痛いぞ」
 からかうようにこう囁くと、総士は奧まで指をつき入れる。
「やぁっ!」
 その瞬間、指先が一騎の弱みを刺激したのだろう。
 止めるまもなく、彼は欲望を解放してしまった。
「あっ……」
「……一人でイったな?」
 呆然とした表情で自分を見上げてくる一騎に対し、総士は厳しい声を投げつける。だが、それはあくまでも表面上のことだ。ここまであっさりと達してしまった、と言うことは一騎が自分がいない間、自慰もしていなかった証拠であろう。そう考えれば満足感すら感じてしまう。
「……ご、めんなさい……」
 しかし、それを告げられない一騎は、総士の下で涙ぐむ。
「悪いと思うなら……僕のも準備してくれるか? 一騎の口で」
 こう言えば、一騎は小さく頷く。そしてもそもそと体勢を変えると、総士のそれへとおそるおそる手を伸ばしてきた。
「いい子だな」
 素直な一騎は好きだ……と囁いてやれば、彼はそのままそれに舌を伸ばしてくる。その熱さが、総士に快感を与えてくれた。



 このまま、穏やかな日常が続くと思っていた。
 そう、あの時までは……





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