あの頃、自分は何でも知っているものだと思っていた。

 そして、彼は何も知らないのだと……

 そして、知らせるべきではないのだ、と考えていた。




 だが、今にして思えばそうではなかった、とわかる。

 確かに、彼は何も知らなかったのかもしれない。

 それ以上に、自分は何も見ようとしなかったのだ。

 自分の思いだけが大切で、

 何が本当に大切なのかを……





INDEXNEXT