傀儡の恋

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 スカンジナビア王国から救援を求める通信が入ったのはそれからすぐのことだ。
「……どうする?……」
 カガリが周囲を見回しながらこう問いかけてくる。
「私としては助けに行きたい。先日までかくまってもらっていたしな」
 現状で《味方》と言い切れる国は数少ない。その少ない国の一つにMSが現れて周囲を蹂躙しているそうだ。
「何よりも、罪のない民間人が窮地に陥っているのを見過ごせない」
 彼女ならそう言うだろう。それは想像がついていた。
 ただ、問題は矢面に立つのは彼女ではなくキラだと言うことだ。
「……キラ君は、どうしたいの?」
 ラミアスがこう問いかける。
「僕は……」
 そう言いながら彼は視線をさまよわせた。どう答えるべきなのか、考えているのだろう。
 彼は自分の影響力の強さをよく知っている。そして、それがもたらす結果もだ。だから慎重にならざるを得ないのだろう。
「救える人がいるなら、救いたいとは思います」
 ただ、その結果、被害を拡大することにならなければ言い。彼はそう小声で付け加えた。
「大丈夫だ、キラ。私も一緒に出陣するからな」
 カガリがそう言って胸を張る。
「それが一番問題ではないかな?」
 ラウはため息と共にそう言う。
「相手の実力がわからない以上、君の護衛にかなりの人数を割かなければいけないだろう? その分、キラのフォローが手薄になる」
 それでは本末転倒ではないか。ラウはそう告げた。
「むしろ、それよりは君はここに残りオーブのパロットを出撃させた方がいい。彼等には早急にキラと連携がとれるようになってもらわなければいけないだろうからね」
 違うか、とカガリ以外の者達に問いかける。
「そうね。今後も似たようなことがないとは限らないわ。少しでもキラ君の負担を軽くできるならその方がいいに決まっているわね」
 ラミアスが賛同してくれた。
「何よりも君はオーブの代表だ。君という存在が万が一にでも失われるようになれば、世界は二つに割れるぞ」
 少し強めの口調でそういえばカガリもなにか考えることがあったのだろう。
「……そうか」
 小さな声でこう告げる。
「ともかく、救援には向かうと言うことでいいんだな?」
 だが、すぐに確認の言葉を口にした。
「間に合うかどうかはわからないけど……」
 それでも救える命があるならば、とキラは続ける。
「わかったわ。キラ君がそのつもりならば誰も反対しないわね」
 ラミアスはそう言って微笑む。だが、次の瞬間には表情を引き締めていた。
「アークエンジェル、発進します。目的地はスカンジナビア王国」
 彼女の指示と共にクルー達が動き出す。
「……少しでもあの巨大MSの情報が欲しいね。映像でも何でもかまわないから」
 それを聞きながらラウはこうつぶやく。
「衛星からデーターを引っ張ってこられるかな?」
 外見からでもわかることが多い。
 おそらく地球軍のマザーには資料があるだろうが、隠されているであろうそれは探し出すのに時間がかかるはずだ。それでは間に合わない可能せいがある。
 それよりも《一族》から与えられたルートを使う方が早い。
「そうですね」
 キラもそう言ってうなずく。
「手伝います」
 そしてこう続けた。
「そうだね。一緒にやった方が早いかな」
 こう言えば彼はほっとしたような表情を作る。そんな彼にうなずき返すとラウは体の向きを変えた。
「では、早速始めようか」
 この言葉に彼はうれしそうに微笑む。何もできないよりはいいと考えているのか、
 適当なところでストップを架けなければ。ラウは心の中でそうつぶやいていた。

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