傀儡の恋

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 シェルターの奥にあったからか。ライブラリーは無事だった。
「……こちらにもあれこれと画像データーが残っていますね」
 中身を確認しながらキラがそう言う。
「子供達の様子が移っているものだけ保存して、後は破棄だね」
「はい」
「まぁ、いざとなれば物理的に破壊すればいいわけだけどね」
 データーを取り出されないためには、いまだにそんな原始的な方法が有効なのだ。
「その前に必要なデーターをできるだけサルベージしておきたい」
 特に子供達に関したものを、とラウが続ければキラは小さくうなずく。
「最近のものはバックアップがないはずですから」
「では、少しでも多くサルベージしないとね」
 言葉と共にケーブルをつないでいく。キラもまたそんなラウの隣でキーボードを準備していた。
「とりあえず、生データーを呼び出します」
 彼がいくつかのキーをたたくとモニターに数字の羅列が表示された。
 その中のいくつかは判読できないのか記号に置き換えられている。
「……かなりの部分が壊れているね」
 これを修復するのは骨だね、とラウはため息をつく。
 不可能ではないが、それなりの時間がかかると言っていい。ここではそんな悠長なことは言っていられないだろう。
「とりあえず、全部コピーしてしまうかい?」
 キラにそう問いかける。
「そうですね。あちらの機材を借りた方が早く修復できると思いますし」
 そう言い返されてラウは確かに、と思う。あちらの機材はザフトの情報局と同レベルだった。バルトフェルドがそろえたのであれば当然なのかもしれないが。
 自分では難しいだろうが、とラウは苦笑を浮かべる。
「ラウさんでも大丈夫でしょう?」
 彼の言葉にキラは首をかしげて見せた。
「残念ながら、私は今ひとつ信用されていないようでね」
 それはそれで仕方がないことだが、と心の中だけで付け加える。
「そんなことはないと思いますよ?」
 キラは即座にそう言い返してきた。
「バルトフェルドさんはラウさんを気に入っていらっしゃると思います」
 さらに彼は言葉を重ねる。
「なぜ、そう思うのかな?」
「メールであれこれ、教えてくれましたので」
 あの男はいったい何がしたいのか。
 いや、それ以上に何をキラに吹き込んだのか。ラウはそれが気になってならない。
 だが、うかつに質問をして地雷を踏み抜くわけにもいかないだろう。
「人の失敗でも書いてあるのかね?」
 それでも何も言わないわけにはいかない。そう判断をしてこう告げる。
「……それは……バルトフェルドさんですから」
 言葉と共にキラは視線をそらす。
「本当にあの人は!」
 余計なことを、とラウは吐き捨てるようにつぶやく。
 一度、闇討ちでもしてやろうか。そんな物騒なことすら考えてしまう。
 子供達を巻き込んで落とし穴を作ってはめるぐらいは許されるのではないか。
 時間がとれるようになったならば本気で考えなければいけないだろう。
 そして、一度懲りればいいのだ。
 ラウはそんなことを考えていた。

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最遊釈厄伝