傀儡の恋
61
復讐の連鎖というものは、どうしても断ち切れないものなのだろうか。
目の前のモニターに映し出されている光景に、ラウは小さなため息をつく。
「……それ以上に問題なのは、アスランが関わっていると言うことだね」
あの機体のパロットは彼だろう。
いったい何をしているのか。そう考えたのは自分だけではないはずだ。
「カガリとキラの立場を理解できているのか?」
本当の意味で、とラウはつぶやく。
「できていないのだろうな」
だが、すぐにこう続ける。
理解できていればこんな風に目立つ行動はとらないはずだ。
同時に、いったい誰がこの光景を録画していたというのだろう。
まるで事前に襲撃がわかっていたかのようではないか。
そう考えれば答えは一つしかない。
「……動いたか」
《一族》が、とつぶやく。
目的が何であるかは考えなくてもわかる。現状を動かしたいのだろう。
だが、それを認められるかどうかと言えば話は別だ。
「連中からキラを守るにはどうしたらいいだろうね」
ともかく、バルトフェルドには連絡をしておこう、とラウは続ける。
その時だ。
ドアをノックする音が耳に届いた。
「開いているよ」
即座にパソコンをシャットダウンしながらこう言い返す。
「すみません。お邪魔をしたようですわね」
言葉と共に顔を出したのはラクスだ。おそらくシャットダウンする音を聞きつけたのだろう。
「気にしなくていいです。ちょっと調べごとをしていただけです。ただ、子供達には見せたくない内容だったので……」
この言葉だけで彼女に払うが何を見ていたのかわかったのか。
「……あの映像は、もう、全世界に配信されたのですね?」
悲しげな表情を作るとこう言ってくる。
「見られたのですか?」
「マルキオ様と私とキラだけです。カリダ様には子供達についていていただいていますので」
ラクスはそう言った。
「本当はキラにも見せたくなかったのですが……」
「周囲がそう言っても、彼は自分の意思で確認したでしょうね」
ため息と共にラウは言い返す。
「彼の部屋にもパソコンは置かれてありますし」
その気になれば、キラに見られないデーターはないだろう。
「……言われてみればそうかもしれません」
ラクスがため息と共にうなずいて見せた。
「それで、何の用事だったのでしょうか」
ふっと思い出したというようにラウは問いかける。
「あぁ、そうでしたわ」
脱線してしまいました、とラクスは苦笑を浮かべた。
「落下物の影響で、この島も暴風雨と高波に襲われそうなのです。ですので皆、シェルターに避難することになりましたの」
「そうですか」
やはりここも戦闘から逃れられないのか、と顔をしかめる。
「……わかりました。準備を終えたら食堂でよろしいのでしょうか」
しかし、それを口に出すわけにはいかない。代わりにラウはこう問いかける。
「はい。荷物はできるだけ最小限にしていただければ……」
「必要なのはデーターだけですので」
バックアップをとったディスクさえあれば何とでもなる。言外にそう告げる。
「あぁ。だからキラと話が合うのですね」
それにラクスはこう言って微笑む。
「そうかもしれません」
真実を告げる代わりにラウはそう言い返すにとどめた。ラクスもまたそれ以上、何も問いかけてこない。
それがなぜなのか。
あえてそれを問いかけはしない。話はここまでだと告げるように、ラウはバックアップをとるためのディスクを引き出しの中からとりだしていた。