傀儡の恋

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「……襲撃?」
 とりあえず、カガリとアスランのことは隠しながら大まかな状況を説明する。
「僕の、せい?」
「いや。それはわからない。マルキオ師の可能性もある」
 彼を慕っている者達は多い。同じくらい疎んじている者達もいるのだ。
「あるいは……可能性は少ないがラクスさんかもしれない」
 彼女の存在を憎んでいるものはそれこそ掃いて捨てるほどいる。言外にそう告げれば、キラは顔をしかめた。
「どちらにしろ、君が気にすることではない。これが私の役目だ」
 ため息と共にそう続ける。
 本当は頭の一つでもなでてやりたい。だが、血で汚れている自分が彼に触れるわけにはいかないだろう。
「でも……」
「ここから先は見ない方がいい。そうでなければ、子供達に笑いかけられなくなるだろう?」
 違うのか、と視線で問いかける。おそらく図星だったのだろう。そうすればキラは視線をそらした。
「マルキオ師にはこれから報告をする。君はあの方から聞きたまえ」
 突き放すような口調になってしまうのは少しでも早く彼をこの場から遠ざけたいからだ。
「僕は、邪魔ですか?」
 今にも泣き出すのではないか。そう感じさせる声音でキラが問いかけてくる。
「……邪魔ではない。ただ、できれば君を関わらせたくない」
 個人的な感情だが、とラウは続けた。
「どうして、ですか?」
 キラが問いかけてくるのは当然だろう。だが、とラウは小さなため息をつく。
「説明をしてあげたいがね。今は時間が惜しい。君以上に子供達にこの光景を見せたくない」
 ここは彼等にとって安全な場所でなければいけない。だから、と続ければキラも理解したのだろう。小さくうなずいてみせる。
「後でなら、教えてくれますか?」
 それでもあきらめきれないのか。彼はこう問いかけてきた。
「マルキオ師の許可がいただけたらね」
 こんな言葉でも彼には十分だったらしい。小さくうなずくとキラはきびすを返す。 「ラクスには『木が倒れているから子供達をよこさないように』と伝えておきます」
 ふっと思いついたというように彼はこう告げた。
「お願いするよ」
 キラが言ってくれるのならば大丈夫だろう。そう考えてラウは言葉を返す。
「はい」
 小さな頃は素直だと思っていた。今もあまり変わっていないらしい。
 それがうれしい。
 こんな風に感じるのはどうしてなのか。
「……外見はともかく、精神は年をとったと言うことか」
 小さな声でそうつぶやく。
「残念ですが私にはなんとも申し上げられません」
 ソウキスはそう言い返してくる。
「仕方がないな。こうして生き返ったものはさほど多くないのだろう?」
 検証できるだけのサンプルがないのではないか。それで検証しろというのは酷というものだろう。
 第一、そんなことをしても何の意味もない。
 自分以外の人間がどう感じているのか。それはどうでもいいことなのだし、とラウは思う。
「まぁ、経験が残っているからいいのだろうがね」
 おかげで、こうしてみんなを守れるのだから。そう続けながら男達の遺体を引きずる。
「あなたがそう思っているなら、そうなのでしょう」
 ソウキスはそう言ってうなずく。
「どちらにしろ、私はあなたに協力するだけです」
「好きにすればいい」  人手は多い方がいいからね。ラウはそう言うと、憂鬱な作業を続けた。

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最遊釈厄伝