傀儡の恋

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 まさか、またこうしてプラントに戻ってくる日が来るとは思っていなかった。
 そう考えながら、ラウは記憶の中にある光景と変わらない街並みを歩いて行く。
「さて……待ち合わせ場所はここでいいはずだが……」
 指示された場所まで付いたところでこう呟いた。
「向こうが私を見つけると言っていたが」
 つまり、開いては自分の顔を知っていると言うことだ。一番問題は、それはいつの時点での自分の顔なのか、と言うことだろう。
 今の自分の姿ならばいい。
 だが、それ以前のものであれば厄介だ。
 そう考えていたときだ。 「ラウ・レヴェリー君?」
 不意に背後から声がかけられる。
「どなたでしょうか」
 どのような状況になろうと対応がとれるだろう態勢を取りつつラウは振り向いた。
 だが、すぐに体から力を抜く。目の前の相手が事前に連絡のあったアイテムを持っていたのだ。
「驚かせてしまったかしら」
 目の前の女性はそう言って微笑む。
「初めまして。私はサラ・テイラーよ」
 言葉とともに手を差し出される。
「よろしくお願いします」
 その手を握りかえしたところで、ラウは彼女の手にあるたこに気づく。それは拳銃を扱う人間によく出来るものだ。
 間違いなく彼女は軍かそれに準ずる組織の人間だろう。
 そんな人間が来たのはどうしてなのか。
 いや。それ以前に、軍の関係者であれば自分の素顔を知っている可能性もある。
 だからと言って彼女を排除することも出来ない。
 自分が気を付けるしかないのか。
 それならば、今までと変わらない。
「こちらこそ。プラントのことは知識としてしか知りませんから、ご教授いただければ幸いです」
 にこやかな表情とともにそう告げる。それは予想外の反応だったのか。さらは一瞬目を丸くした。
「もちろんよ」
 だが、すぐに笑顔に戻るとこう言い返してくる。
 まだまだ甘いな。
 彼女のその反応にラウはそんな感想を抱いていた。

「……それで、お前は何を隠しているんだ?」
 不意にバルトフェルドがこう問いかけてくる。
「別に、何も……」
 そういいながら、キラはさりげなく視線をそらす。
「お前な……」
 ため息とともにバルトフェルドがキラの頭に手を置く。
「そんなに俺たちが信用できないか?」
 小さな子供にするようにキラの髪をなでながら彼はこう問いかけてきた。
「そんなことはありません」
「ならば、だ」
「でも、これば僕だけの力で解決しなければいけないことです」
 自分の実の両親が犯した罪を償うのは、その研究の結果生まれた自分がすべきことだろう。
 子供というならカガリもいる。しかし、カガリは既に大きな責任を背負わされているのだ。これ以上は彼女がつぶれかねない。
 だから、自分だけで何とかしようと考えていた。
「……ガキが」
 バルトフェルドがあきれたように呟く。
「何ともなっていないからみんなが心配しているだろうが」
 そう言われても、とキラは心の中でため息をついた。真実を話すわけにはいかないのだ。
「まったく……だからラミアスやマードックが落ち込んでいるんだぞ」
 さらに彼はこう言う。
「……すみません」
 それにこう言い返すしか出来なかった。

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最遊釈厄伝