この照らす日月の下は……
13
エントランスにつけば、見知らぬ母子がカリダと向かい合っていた。
「今日、引っ越していらしたのですって」
カリダがそう教えてくれる。
「初めまして」
キラは母の影に隠れるようにしながら二人に頭を下げた。
「あら、可愛い子ね。こんにちは。今度引っ越してきたザラです」
母親らしい女性が目線を合わせながらこう言ってくる。
「ザラ、さん?」
キラはおずおずと聞き返す。
「えぇ。私はレノア。この子はアスランよ」
言葉と共にレノアはキラの方へとアスランを押し出してきた。
「アスラン・ザラです。今年四歳です」
それが会津だったのだろうか。彼はこう言う。
「キラ・ヤマトです。四歳です」
何故かはわからない。だが、どうしてもつかんだカリダの服の裾を離せないまま、キラはこう言う。
「同じ年?」
「みたいです」
アスランの問いかけに小さくうなずくことで答えを返す。
「それは嬉しいな」
言葉と共に彼は笑う。しかし、それがあまりにきれいな笑みだったので、キラには作り物のようにしか見えない。
「一緒に幼年学校に通えるね」
アスランはさらに言葉を重ねる。
「同じ学校なら」
もっとも、新しく来たナチュラルであそこに通う者はほとんどいないのだが。
「多分一緒だよ。ここだとコーディネイターが通える学校は一つしかないんだろう?」
キラの疑問を読み取ったかのようにアスランはこう言った。
「コーディネイターなの?」
「そうだよ。僕はプラントからきたんだ」
だから、色々と教えてね。そう言う彼にうなずいてもいいものか。
多分、最初のうちは大丈夫だろう。だが、すぐに別のメンバーと仲良くなるのではないか。そして、自分はいなかったことにされる。
「……僕は、第一世代だから、他の友達を探した方がいいと思う」
キラはそう言う。
「関係ないよ」
だが、アスランはこう言って笑うだけだ。
「誰かが何かを言っても、僕が守ってあげる」
彼はそうすることが正しいと考えているのだろうか。それともと思いながら、キラは小さく首を縦に振って見せた。
「あの男には気をつけるのだぞ」
リビングに戻ったところでいきなりギナがこう言ってくた。
「あれはお前を振り回しかねん」
いや、と彼は続ける。
「自分の正義のためにお前を利用しかねん」
それはどういうことなのだろうか。そう思いながらキラはギナを見つめる。
「キラにはわからないと思うぞ」
ムウがキラの頭をなでながらギナに苦笑を向けた。
「わからなくても注意は出来よう」
「そうなんだけどな」
あれは厄介だぞ、ムウも言う。
「そのあたりのことはこちらで注意をするしかあるまい」
「そうだな」
いったい彼等はアスランの何を見てそう判断したのだろうか。キラにはどうしてもわからなかった。