この照らす日月の下は……
10
ハルマがサハク当主と共に帰ってきたのは夕食が終わってからのことだった。
「すまなかったね。この子達の面倒を見てもらって」
「いいえ。むしろキラの遊び相手になってくれてありがたかったですわ」
サハク当主にカリダがそう言って微笑む。
「キラも喜んでいましたし」
そう続ければ彼はうなずいてみせる。
「そうか。キラ、おいで」
だけではなくこの言葉と共に手を広げた。
いいのだろうか。確認するようにハルマを見上げる。そうすればすぐに父は小さくうなずいて見せたので、安心して近づいていった。
「大きくなったかな?」
そう言いながら彼はキラの脇の下に手を入れると高い高いをするように持ち上げた。
「養父上、キラを落とさないでください」
ミナが彼に向かってこう言う。
「落とさないが?」
「カナードは落としたではありませんか」
「あれはあの子が暴れるからだよ」
そう言いながらサハク当主は視線をそらす。同時にキラの身体を床へと下ろした。
「このくらいなら、落ちても大丈夫ですよ?」
そんな彼を見上げながらキラはこう主張する。
「わかっているのだがな……万が一の時はあれこれうるさいことになりそうだ」
苦笑と共に彼はそう言う。その理由がわからずにキラは視線をミナ達へと向ける。
「養父上も少しは休まれないと」
「そうだな。ハルマ殿と話したいこともたくさんあるだろう」
だが、彼等は教えてくれるつもりはないらしい。わざとらしいセリフを口にしてくれた。
「キラ、風呂に行くぞ」
さらにムウまでもがこう言ってくる。
「そうしたら寝る時間だろう?」
確かにいつもならそうだ。しかし、今日は三人がいる。
「だって、明日になれば帰っちゃうんでしょう?」
少しでも一緒にいたい、とそう訴えた。
「大丈夫だ、キラ。我らはしばらくこちらにおる。養父殿がしばらく会議に参加せねばならぬそうだからの」
「そういうことだ。まぁ、夜はホテルに帰るけどな」
さすがにそこまで甘えられない。ラウはそう続けた。
「泊まっていってくれてもかまわないのよ? でも、ベッドはキラと一緒になるわね」
カリダが平然と口にする。
「あ。それはいいな。と言うことでキラ。俺と一緒に寝ような」
ムウがそう言って笑う。
「ずるいぞ、ムウ」
「抜け駆けをするでない」
二人が彼に対しそんなセリフを口にした。
「早い者勝ちだろう」
勝ち誇ったようにムウが言い返す。
「俺にあれこれ言うよりも、明日、どちらがキラと一緒に寝るのか。決めておけばいいんじゃね?」
さらに彼はこう言った。
「それも一理あるの」
あっさりと納得する彼等にキラはどう反応すればいいのだろうか。
「と言うことで風呂な。カリダさん、キラの着替えは?」
「用意しておくわ。お願いね、ムウくん」
「任せておいてください」
そう言うとムウはキラを抱えたままさっさと歩き出す。
「自分で歩けます!」
「いいから、いいから」
その言葉と共にキラはバスルームへと運ばれてしまった。