この照らす日月の下は……
02
メールを読み終わったカリダが視線をキラへと向けてくる。
「お客様が来るの」
そして、はしゃいだ声音でこう言った。
「だから、キラも一緒にお出迎えしてくれるかしら?」
この言葉にキラは首をかしげる。
「僕も一緒でいいの?」
「えぇ。あちらも子どもを連れてきているのですって」
あなたと同じくらいの年だそうよ、と母は教えてくれた。
「僕と?」
「そう。コーディネイターの女の子よ」
この言葉にキラの目が丸くなる。すぐにその言葉が理解できなかったのだ。
「コーディネイターの女の子?」
オーブにもコーディネイターはいる。そして、このコペルニクスは研究都市という意味もあってプラントから出向している者達もいる。
その関係でここにもコーディネイターの子どもは何人かいた。しかし、女の子は一人だけしか知らない。
「えぇ」
カリダがこう言ってうなずく。
「僕と、お友達になってくれるかな?」
小さな声でキラはこう言った。
ナチュラルの子ども達はもちろん、同年代のコーディネイターも多くが第二世代のせいか、第一世代のキラは微妙に距離を置かれている。そのせいで親しい友人がいない。むしろ腫れ物扱いされているような気がするのだ。
「大丈夫よ、キラ」
母さんの自慢の友達の子どもだから、とカリダは言う。
「だから、一緒に行ってくれる?」
彼女がそう言いきるなら大丈夫なのではないか。
「うん」
そう考えて、キラはしっかりとうなずいて見せた。
翌日、キラはカリダにきれいな服を着せられた。カリダも珍しくよそ行きの服をクローゼットから取り出している。そんな行動ですらすら楽しそうだ。
「行ってくるわ」
支度がすんだところで、今日は午後から仕事に行くというハルマに向かって彼女はそう声をかける。
「あぁ。ゆっくりしておいで」
彼はニュースレターから顔を上げると笑みを浮かべた。そしてこう告げる。
「本当に久々なのだろう? 私なら何とでもなるからね」
彼はさらにそう口にした。
「ごめんなさい、あなた」
カリダはそう言い返す。
「でも、キラのことがあるから、そう遅くはならないわ。あちらにも子どもがいるし」
「そうか」
「お土産を買ってくるわね」
本当に両親は仲がいい。
そんな両親を見ていると安心できる。
いつか自分にもあんな風になれる相手が見つかるのだろうか。
そうだといいな、とキラは心の中でつぶやく。
「キラ」
カリダが彼の名を呼ぶ。
「はい、ママ」
言葉を返すとさしのべられた手を握る。暖かなその手にキラは笑みを浮かべた。