「……ネオなのに、ネオじゃないの?」
 話し合いをしている二人の傍でステラ達が不安そうな表情を作っている。
「と言うよりも……ムウさんがネオさんだったんだけど……」
 何故か彼等に懐かれているキラが出来るだけそれを和らげようと口を開く。
「ムウさんが記憶を失っていたときがネオさん。全部思い出したから、ムウさんに戻ったけど、ちゃんとステラ達のことも覚えているよ」
 だから、みんなが呼びやすいように呼べばいいんじゃないかな? とキラは首をかしげる。
「……でも、怒られない?」
 ステラはこう問いかけてくる。
「マリューさんは優しいから。それに、ちゃんとわかっているよ」
 ステラ達がどれだけネオのことを大好きなのかも。だから、心配はいらない……と笑みを深めた。
「キラがそう言うんだから、さ。信じろよ」
 スティングがそう言いながらステラの頭を撫でている。
「そうそう。キラは偉いんだから、何とかしてくれるって」
 アウルが笑いながらそう言った。
「……それは、違うと思うよ」
 人の心は命令してどうなるものではない。だから、とキラは続ける。
「あの人が君達を大切に思っているのは、あの人の本心だよ」
 そして、マリューに対する気持ちもそうだろう。
「大丈夫。きっと、みんな幸せになれるよ」
 だから、とキラはそう言った。
「キラも? キラも、幸せになれるの?」
 不意にステラがそう問いかけてくる。まさか、こんなことを聞かれるとは思わなかった、とキラは目を丸くした。だが、直ぐに唇に笑みを浮かべる。
「なれるよ。だから、安心して」
 そう言い返しながらも、キラはそんなことを考えたこともなかった……と心の中で呟く。
 いや。自分は幸せになっていけないのだ。そう考えていた、と言った方が正しいのか。
 今でもこの目にこびりついているあの光景がある限り、自分にはその資格がない。自分一人を産み出すためにいったいどれだけの命が失われたのか。そう考えれば、幸せになれるはずなんてないのだ。
 だから、せめて親しい人たちには幸せになって欲しいと思う。
 それを見ているだけで十分だから。
 もっとも、そんなことを考えていると皆――特にカガリ――に知られるわけにはいかない。
 そんなことになれば、彼女がどれだけ気に病むか。
 今の彼女にはオーブのことだけを考えて欲しい。そうすることが一番いいことに決まっているから、と思う。
「なら、いいよね」
 ふわりとステラが微笑む。
「みんなが、幸せになれるのがいいよね」
「そうだね」
 特に、マリューは……と心の中で呟く。
 その時だ。
「どうやら、話が終わったようだぜ」
 アウルが笑いながらこういう。
「ネオはどうなったの?」
 その瞬間、この言葉とともにステラが振り向こうとする。それをスティングが止めた。
「何で?」
 邪魔をするの、と彼女が問いかけてくる。
「……ちょーっと、ステラには刺激が強いかな?」
 苦笑と共にキラはそう言う。
「でも、もう少し周囲に気をつけて欲しいかな」
 とりあえず、終わったら文句を言わせて貰わないと……とキラは呟く。
 それでも目の前の様子から判断をして、いい方向へと向かうのではないか。それだけで十分だろう。そう心の中で呟いていた。



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