何か理由があったのか。
 オーブ軍の動きは、前回と違って鬼気迫るものがあった。
 カガリの慟哭すらも、彼等を止めることは出来なかった。
 それは、間違いなく彼等が軍人だったからだろう。だから、彼等――トダカの決断を責めることは出来ない。しかも、彼は全ての責任を負って黄泉路をたどっていったのだ。
 しかし、カガリには大きな衝撃だったのだろう。ただ、見つめることしかできなかった、と言うことは。
 救いがあるとすれば、トダカが退避させたアマギ達がアークエンジェルに合流したことだろうか。
 しかし、だからこそ今のままではいられないと言うことも事実だ。
「……これから、どうするの?」
 カガリ、とキラは問いかける。
「恐らく、オーブ軍はもう、地球軍との共同作戦は不可能だろうからな。戦場に出てくることはないぞ」
 バルトフェルドがこう口を挟んできた。
「否定、出来ません」
 軍人はいる。
 だが、その乗艦となる戦艦も空母も、今回の一件で多大な損傷を受けている。本土の防衛が精一杯ではないだろうか。アマギもそう言って頷く。
「……だが、セイランはまだオーブにいる」
 カガリが忌々しそうな口調でそう言った。
「セイランを何とかしなければ、オーブの民は大西洋連合――いや、ブルーコスモスの都合の良い道具のままだ」
 それは認められない。
 オーブの民は、オーブの理念に惹かれて集まってきた者達なのに……と彼女は続ける。
「だから、私はセイランを排除したい……そして、出来るならこの戦争を終わらせたいと思う」
 そのために力を貸してくれるか? と彼女はアマギ達に視線を向けた。
「もちろんです、カガリ様」
 彼等は即座に言葉を返してくる。
「ありがとう……キラは?」
 手を貸してくれるのか? と不安そうに言葉をかけられた。
「君が望むなら……」
 キラはそう言って微笑む。
「僕も、今の状況は良いと思わないから」
 確かに、世界が二つに割れてしまうより、もう一つ、クッションになれる場所がある方がいいだろうし……と付け加えた。
「でも、みんなは?」
 どうするのか、とキラはマリュー達へと視線を向ける。そして、最後にラクスとバルトフェルドを見つめた。
「私たちは、キラ君が決めたことに従うわ」
 微笑みながらマリューがこう言ってくる。
「マリューさん……」
「それに、今の私たちにとっても、オーブが帰る場所だものね」
 だから、気にしないで……と彼女は続けた。それに、ノイマン達も頷いてみせる。
「わたくしも、ご協力しますわ。ブルーコスモスを何とかしない限り、いくら平和な世界を作っても、直ぐに壊されますもの」
 それでは行けないだろう、とラクスは微笑む。
「ラクスがこういう以上、俺の結論は一つだけだ」
 バルトフェルドもこういって頷く。
「だが、地球軍への対応はそれでいいとしても……プラントへの対応はどうするんだ?」
 協力体制を取るのか。それとも、と彼は続ける。
「それは……」
 そこまでは考えていなかったのだろう。カガリも言葉に詰まっている。
「……今のままじゃ、ダメなのかな?」
 キラは小さな声でこう呟く。
「キラ?」
「……アスランも、シン君もいるし……他にも似たような人たちがいるかもしれないし……」
 何よりも、彼等は自分たちと敵対したいと考えていないのではないか。だから、今のまま、適度な距離で付き合っていければいいような気がする。
「……でないと、アスランが怖い……」
 ぼそっと付け加えた言葉に、誰もが一瞬言葉を失った。
「確かに……あいつが何をしてくるかわからないからな」
 完全に敵対すると、とバルトフェルドが肩を振るわせる。次の瞬間、周囲が笑いに包まれたのは否定できない事実だった。



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