秘密の地図を描こう

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 平和という元は唐突に破られるものらしい。
 モニターに映し出された光景に、誰もが息を呑む。それだけ、信じられない光景だった。
「……これは、どこですか?」
 何とか、キラは言葉を絞り出した。
「バルト三国のどこか、だと……」
 今、調べるわ……とミリアリアが即座に言い返してくる。
「いや……いい」
 それをバルトフェルドが遮った。
「バルトフェルド隊長?」
「今から行っても間に合わない」
 残念だが、と彼は渋面を作りながら言葉を口にする。
「ですが……」
 だからといって見捨てられるか、とキラは思う。
「それに、ザフトが動いたようだ」
 この言葉に改めてモニターを確認する。確かに、それらしい機体が確認できた。
「まぁ、どこまで対処できるか、わからないがな」
 あんな冗談みたいな機体を開発しているとは思わなかった、と彼は続ける。
「今まで、MSはジンが基準になっていましたからね」
 ザフトはもちろん、地球軍やオーブ軍でも、とラウが口を挟んでくる。
「元々はプラントで作業をするために開発されたものですし」
 プラント内部で作業できる大きさ、と考えれば、あのサイズが最適だったのだ。
「考えてみれば、地上ではそのような制約は必要ないのでしょう」
 だから、と言って、あの大きさでは……とラウは眉根を寄せる。
「ともかく、今回だけで終わるとは思えません。それに……」
「それに?」
「あくまでも、私のカンですが……あれを操縦しているのはエクスンテッドでしょうね」
 あの男が絡んでいる可能性は少なくない。そう続ける。
「あぁ。十分にあり得るな」
 あれだけの機体を操縦するにはかなりの身体能力がいる。ナチュラルの中からそれを探すよりは手持ちの駒をつかった方が確実だろう。
「ともかく、だ。次にどこに現れるとしても……おそらくはヨーロッパのどこかだと思うぞ」
 バルトフェルドがそう断言をする。
「どうして、そう考えられるのですか?」
 ニコルがそう問いかけた。
「あれだけの巨体だ。移動するのに時間がかかるはず」
 しかし、こちらに威圧感を与えようとするなら、すぐに次の攻撃をしなければいけない。ある程度人口がいる場所と考えれば、アフリカには移動しないだろう。
「あくまでも俺の推測だがな」
「しかし、可能性は高い」
 バルトフェルドの言葉にラウもうなずいてみせる。
「そうですね。私もそう思います」
 さらにマリューも彼らに同意の言葉を口にした。
「さて、どうする?」
 バルトフェルドがキラに視線を向けるとこう問いかけてくる。
「僕?」
 こういうことはカガリが決めることではないか。そう考えながら彼女へと視線を向ける。
「お前が決めろ。実際にあれと戦うのは、お前になるだろうからな」
 自分達はフォローしかできない。キラの視線を受けてカガリはそう言い返してくる。
「お前はどうしたい? 前は私のわがままを聞いてもらったから、今回はお前のわがままを聞くぞ」
 さらに彼女はこう付け加えた。
 しかし、彼女たちにはもうすでに、たくさん、自分のわがままを聞いてもらっているような気がするのは錯覚だろうか。
 でも、とキラは思う。
「助けられる命があるなら、助けたい。もちろん、あれのパイロットも含めて……」
 それがわがままだと言うこともわかっている。そして、かなり難しいと言うこともだ。
「なら、決まりだな」
 カガリがそう言って笑う。
「あれのデーターを集めますね」
 ニコルも即座にそう口にした。
 それを合図に誰もが動き出す。
「君は休んでいるように」
 そう言いながら、ラウがキラの頭に手を置く。しかし、それでいいのかどうかがわからない。
「体力勝負になるだろうからな。休んでおけ」
「何なら、添い寝をしてやろうか?」
 からかうようにカガリが言ってくる。
「遠慮するから、それは」
 キラが即座にこう言い返した瞬間、周囲から笑い声が上がった。


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最遊釈厄伝