秘密の地図を描こう
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「……何故……」
カガリはそう呟く。
「責任をとるべきなのは、お前たちじゃないだろう?」
もっと別の人間がいるはずだ。それなのに、何故……と呟いてしまう。
『彼らが軍人だから、だ』
静かな声でバルトフェルドがそう言ってくる。
『俺だって、同じ選択をしたかもしれないからな』
そう続けたのは、彼なりの優しさなのだろうか。
「……わかっている……」
ユウナに責任をとらせるわけにはいかない。しかし、誰かが責任をとらなければいけなかったのだ、と。
『俺としては、キラの反応が怖いがな』
今回のことが自分がウィルスを作ったせいだ、と思い込んではいないか。それだけならばまだしも落ち込まれていては困る。彼はそう続ける。
「……あり得るな」
いや、キラなら絶対落ち込んでいる……とカガリは断言できた。
『だろう? だから、そんなあいつの前でお前が落ち込んでいる姿を見せるな』
もっとも、とバルトフェルドは続ける。
『あいつの前でなければ、好きなだけ落ち込んでくれてかまわないがな』
そう付け加えたのは、彼なりの優しさなのだろうか。
「……そのときは、遠慮なくそうさせてもらう」
だが、今は自力で何とかしたい。そう続ける。
『わかった。戻るぞ』
バルトフェルドの言葉に素直に従う。機体の向きを変える間、ずっと、まだ炎を上げている船の残骸を瞳に焼き付けるかのようにカガリは見つめていた。
『何をやっているだか』
あきれたような声とともにミゲルの機体にセイバーがすくい上げられる。
しかし、それにすぐ答えを返すことができない。
「……あれは、誰だ」
見知らぬ機体のパイロットは、と呟く。
それが普通レベルのパイロットならば何も言わない。しかし、一撃で自分を撃墜できるほどの人間を、自分は知らない。
『ともかく、帰還するぞ』
もう、彼に何を言っても無駄だと判断したのだろうか。ミゲルはそういうと同時にミネルバへ向けて移動を始める。
『キラだって一人じゃない。その上バルトフェルド隊長やクルーゼ隊長がそばにいるんだ。人脈が広がったとしてもおかしくないだろう?』
さらにマルキオのそれがあるのだろうし、と彼は続ける。
「だからといって!」
『しかも、お前は女性陣から危険物扱いされているんだ。あきらめるんだな』
自分の失言のせいだろう、と彼は言い切った。そう言われると、反論のしようもない。
『わかったなら、少しは落ち着け』
第一、セイバーの今の状態では何もできないだろう。彼はさらにそう指摘してくる。
確かに、ここまで見事に駆動系を破壊されては、修理にどれだけかかるだろうか。見当も付かない。
その間、自分は行動を制限されるだろう。
「……厄介だな」
キラの顔を見に行けないか。それでは彼に許してもらうこともできないだろう。
「どうすればいいのか」
メールを出しても返事は返ってきていない。
無視されているのか。それとも、彼の手に届いていないのか。
「カガリも怒っているからな……」
今回ばかりはフォローも望めない。四面楚歌、と言うのはこのような状況なのだろうか。
だが、何とかしなければいけない。
「何か、方法があるはずなんだ」
そう呟いていた。