秘密の地図を描こう

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「アスラン?」
 彼の姿を認めた瞬間、キラは驚いたように目を丸くしている。
「いつ、プラントに来たの?」
 さらに彼はこう付け加えた。
「いつって……」
 それに言葉を返しながら、アスランがニコルへと視線を移動させている。
「君がここに入院してから、だそうだよ。私も先日聞いたばかりだ」
 どこかの誰かが情報をストップしていたらしいね、とラウは口を挟んだ。
 それだけで、キラには誰がそうしたのかわかったのだろう。視線をギルバートへと移動した。
「オーブの真意を確かめてからでなければそれを知らせるわけにいかなかった、と言うだけだよ」
 自分の立場としては、と彼は笑う。
「アマルフィ君達に伝えたのは、彼らが現在でもザフトの軍人だから、だよ」
 キラやラウとは立場が違う、とそのまま続けた。
「本当ですか?」
 疑いを消せないという表情でキラはさらに詰め寄っている。
「そこまでにしておきなさい。その男にしてもあれこれ考えてのことだろうからね」
 それよりも、と彼を手招く。
「なんですか?」
「座りなさい。でなければ話をしにくいと思うよ?」
 彼らが、と言いながらアスランの方を視線で示す。
「……はい」
 確かにそうだ、と思ったのだろう。キラは小さくうなずくと素直にラウの隣に腰を下ろす。
「……おや。私はどこに座ればいいのかね?」
 即座にギルバートが問いかけてくる。
「好きなところに座ればよかろう」
 と言っても、空いているのはアスランの隣ぐらいだ。
「君も、ずいぶんと過保護になったものだ」
 わざとらしいため息とともにギルバートは移動する。
「……それで、何をしに来たの?」
 アスラン、とキラは問いかけの言葉を口にした。
「何って……最初はプラントがどうするかを確認しに、だな」
 それが命令だったから、とアスランが言い返してくる。
「……素直にそれにしたがったんだ」
 そして、カガリを一人にしたのか、とキラはため息をつく。
「そうしろと言ったのは、カガリだぞ?」
 即座にアスランは反論してくる。
「……彼女の場合、そう言わなければいけなかったからじゃないの? でも、アスランが反対したらあきらめたと思うよ」
 あるいは、別の理由を使ってでもいい。あと少し、出国を遅らせればよかったのではないか。キラはさらにそう付け加えた。
 それは、先ほどミーアが教えてくれた内容が関係しているのだろう。
 もっとも、アスランはそれを知らないはずだ。
「そこまでにしておきなさい、キラ」
 苦笑とともにラウは口を開く。
「アスランはしっかりしているようでいて、実は視野が狭い人間だと、君も知っているだろう?」
 自分が見たいものしか見ていない。違うか、とラウは言う。
「しかも、よく一人だけで悩みまくっていますよね」
 さらにニコルがこう言ってくる。
「どちらにしろ、彼はここに来てしまった。それは変えようがないことだよ?」
 大切なのはこれからのことではないか。ギルバートがフォローするかのように告げる。しかし、それがフォローではないと言うことを言われた本人が気づいているだろうか。
「彼にはこれから、地球に戻ってもらうからね」
 カガリ達のことも、その後のことだ。そう言ってギルバートは笑みを深める。
「君が動くまで何とか支えてくれるだろう」
 それはどうだろうか。ふっと心の中で呟く。
「ミゲルもいますからね」
 確かに、昔からアスラン達のフォローは彼の役目だ。
「そうだな」
 責任を持って面倒を見てもらおう。ラウはそんな無責任なことを考えていた。

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最遊釈厄伝