秘密の地図を描こう

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 結局、自分がとれる選択肢はひとつしかなかった。
 ニコルを通じてギルバートに連絡を入れたのは、あれからすぐのことだった。意外なことに、それからすぐに彼からの呼び出しがあった。
「よく来てくれたね」
 ニコルに伴われてギルバートの元を訪れたアスランに、彼は微笑みとともにこう言ってきた。
「いえ。私の方こそお忙しいときにお時間を取っていただき、申し訳ありません」
 地球軍が正式に宣戦布告をした以上、プラント側もきちんと対応をとらなければいけない。現在のプラントのシステムでは、すべての判断を最高評議会議長のギルバートがすることになっていたのではないか。
「君が来てくれることの方が重要だよ」
 経験者は一人でも多い方がいい。からはそう言って微笑む。
「……ご期待に添えるかどうか、わかりませんが……」
 自分ぐらいの経験であれば同期の者達も同じだろう。
「謙遜は美徳だが、余りすぎるとイヤミだよ?」
 小さな笑いとともにギルバートは言い返してくる。
「アマルフィ君」
 そのまま彼は視線を移動させた。
「あの機体は完成しているのかね?」
 そのまま、こう問いかける。
「セイバーでしたら、完成しておりますが?」
 今朝方、とニコルは言い返す。
「たぶん、本日中に報告書が提出されるかと」
 さらに続けられた言葉にギルバートはうなずいてみせる。
「ひょっとしてあれをアスランに?」
「イージスの発展系だ。彼ならば使いこなしてくれると思うが?」
 どうだろうか、と彼は確認の言葉をニコルに投げかけている。
「そうですね。確かに、アスランなら乗りこなせると思いますが……」
 いいのか、と彼は言外に問いかけた。それは、新参者の自分に新型を預けることではないか。
「かなわないだろう」
 だが、ギルバートは気にする様子を見せない。
「必要なのは適材適所だからね」
 さらに彼はこう言う。
「わかりました。ならば、後でアスランを案内します」
 ニコルはそう言ってうなずいた。
「そうしてくれるかね? 本来ならば、私が自分で案内したいところなのだが……さすがに忙しくてね」
 彼はそう言う。
「わかっています」
「詳しい辞令は後日、と言うことになるが……アスラン君には地球に行ってミネルバに合流してもらおうと考えている」
 アスランならば、アークエンジェルのクルーとも顔見知りだろう。いざというときにあちらに合流してもらえるのではないか。彼はさらに言葉を重ねた。
「アークエンジェル、ですか?」
 あの艦がどこかで修理されていることは知っていた。しかし、いったい、何故、今その名がギルバートの口から出るのだろうか。
「現在、あの艦はオーブを離れているようだよ」
 もっとも、どこにいるかまではつかめていないが……と彼は続けた。
「そうですか」
 と言うことは、ラクスが何か決断をしたのだろう。
「情報をつかみ次第、ミネルバに伝えるように命じてはある」
 だから、あの艦に行けば、何かがわかるはずだ。彼はさらに言葉を重ねる。
「わかりました」
 確かに、今の自分にできることはそれしかないだろう。それに、と心の中で付け加える。あちらの情報がつかめれば、キラが安心するのではないか。
「……ただひとつ、個人的なお願いがあります」
 その前に、と思いながらアスランは口を開く。
「キラに会わせていただけませんか?」
 地球に行く前に、と続ける。
「……アスラン、それは……」
「話をさせてほしい、とまでは言いません。せめて、顔だけでも」
 見たい、とアスランは思う。
「そうだね」
 それにギルバートは何かを考え込むような表情を作った。
「とりあえず、彼の様子を確認してみなければわからないが……顔を見るぐらいなら大丈夫かな?」
 それについても後ででかまわないか、と彼は逆に聞き返してくる。
「それは……仕方がないです」
 今すぐにでも、と思うのは事実だ。しかし、入院しているのであれば無理はさせられない。
「では、それに関してはまた後で」
 いいかな、と彼はニコルに問いかけている。
「はい。アスラン?」
 とりあえず、アスランの機体になる予定のMSを確認しに移行。彼はすぐにそう言ってきた。
「あぁ」
 これ以上、ギルバートを拘束するのはまずいのではないか。そう判断をしてアスランはうなずき返す。
「では、議長……」
「あぁ。できるだけ早く連絡をするよ」
 彼の言葉に軽く頭を下げると、アスランはきびすを返した。

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最遊釈厄伝