秘密の地図を描こう

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 モニターに映し出されている情報に、バルトフェルドは思わず眉根を寄せる。
「どうかしました?」
 それに気がついたのだろう。マリューが声をかけてきた。
「どうしたものか、と思ってな」
 おそらく、近いうちにオーブは大西洋連合に組み込まれるだろう。そうなれば、この国にいるコーディネイターは居場所を失うのはわかりきったことだ。
 まぁ、そうなれば自分達はさっさとプラントに戻ればいいだけかもしれない。あちらにはキラもいる。
 しかし、彼女たちはどうするのだろうか。
 ナチュラルである以上、オーブにとどまることはできる。
 しかし、地球軍にとって《アークエンジェル》の存在は汚点だ。
 そのクルーを受け入れるかどうか、わからない。そして、オーブも一部を除いて積極的に守ろうとはしないだろう。
 しかし、それを認めがたいと思う程度には彼らに好意を抱いている。特に、目の前の女性には……だ。それが恋愛感情なのかどうかまでは確認しなくていいと考えている。
「また引っ越すしかないんだろうが」
 面倒だな、と曖昧な笑みとともに口にした。
「そうですね。そのときは、私たちもこの国にいられなくなるでしょうし」
 宇宙に上がっても受け入れてもらえるところがあるだろうか、と首をかしげる。
「いざとなれば、ジャンク屋ギルドにでも雇ってもらえばいいかもしれませんけど」
「あぁ。それもいいかもしれないな」
 それならば何とかなるだろう。
「もっとも、そうならないのが一番いいんだろうが……」
 時間の問題だろう、とバルトフェルドはため息をつく。
「そういえば、カガリさんが戻ってきたそうですわ」
 ザフトの船で、とマリューが言う。
「……あれか」
「えぇ。修理を私が担当することになりました」
 もっとも、どこまでできるか……と彼女は眉根を寄せる。その理由もバルトフェルドにはわかっていた。
「本当に厄介だな」
 そう言いながら立ち上がる。
「飲むかね?」
 何を、と言わなくても彼女にはわかるようだ。
「また新しいブレンドを?」
「そう。今回は少し自信があるんだがね」
 前回、だめ出しされた部分を修正してみたつもりだから……と付け加える。
「それは楽しみですね」
 それに、マリューは微笑みを返してきた。

 ギルバートからの指示の意図がわからない。
 いや、わからないと言うのは少し違うだろう。わからなかったとしても、彼の指示ならば従うべきだと認識している。
 問題だったのは、相手の名前なのだ……とようやく思い当たった。
「……ラクス・クライン……」
 彼女は行方不明だと認識していたが、オーブにいたのか……と口の中だけで付け加える。
 だが、考えてみればあり得ない話ではない。三隻連合の一角を担っていたのはオーブ軍だ。だからカガリが彼女たちをかくまったとしてもおかしくはないだろう。
 そして、今、キラを保護しているのはギルバートだ。
 その縁でつながりがあったのだろう、と思う。
「とりあえず、ギルの指示だ」
 無視するわけにはいかない、と呟く。
「と言っても、上陸許可が出なければ意味はないが……」
 出るのだろうか。そう思いながら周囲を見回す。そうすれば、グラディスがモルゲンレーテの技術者と話をしているのが目に入った。
「さすがはオーブ、と言うべきなのか?」
 自分達がザフトの人間だとわかっていても、彼女は全く気にする様子を見せない。それが演技だとしても嫌悪感を感じさせないだけすごい。あるいは、彼女もコーディネイターなのだろうか。
「いざとなったら、協力してもらえるだろうか」
 それとも、と呟く。
「無理はできないが最善は尽くしたいからな」
 少しでも早く戦争を終わらせるために。レイはそう付け加えた。

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最遊釈厄伝