秘密の地図を描こう

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「後、これはまだオフレコですが……おそらく、ミゲル達はミネルバに配属になるかと思います」
 ニコルが微笑みとともにこう言ってくる。
「……ひょっとして、他の隊長達からさじを投げられた、とか?」
 彼、とキラは問いかけてしまった。脳裏にあるのは、もちろん、シンの姿だ。
「それもあるかもしれませんが……それ以上に、あの艦の艦長をはじめとしたメインクルーが新人だから、でしょうね」
 優秀かもしれないが、それ以上に経験値がものを言うのが戦場だ。ニコルはそう言う。
「今、自由に配属できるのが彼の隊だけだから、と言うことも理由のひとつでしょう」
 他の隊はだいたい乗艦が決まっている。
「彼ならば十分つとまるとは思うよ」
 そういう意味では、とラウもうなずく。
「問題は厄介な判断をすべて彼にゆだねられることだろうね」
 艦長次第だろうが、と彼は続けた。
「その前に、さっさと自分で出撃しそうですけどね、彼」
 苦笑とともにニコルが言う。
「あぁ、その可能性は否定できないね」
 それはそれで彼らしいが、艦長は大変だろうね……とラウは笑った。
「そういうものなのですか?」
 自分が知っているザフトの隊長は多くはない。だが、ラウにしてもバルトフェルドにしても、結構自分が最前線に出るタイプだったのだが、とキラは首をかしげる。
「隊長はミゲルがいた頃はあまり出撃されませんでしたね」
 バルトフェルドに関してはわからないが、とニコルは言う。
「優秀な艦長がいたからできたことだよ」
 ラウはそう口にする。
「そういえば、ダコスタくんがいたっけ」
 バルトフェルドのところには、とキラは納得した。
「ミゲル、大丈夫かな?」
 思わずこう呟く。
「どうだろうね」
「何事もなければ、大丈夫だと思いますよ」
 例えパトロール程度でも経験を積めば何とかなるだろうから、とニコルは言う。
「何事もなければ、ね」
 それが一番なのだが、とラウは口にする。
「現状では、いつまでとは確定できないからね」
「……そうですね」
 ラウの言葉に、ニコルもうなずく。
「そのあたりのことはギルに任せておけばいい。君があれこれ思い悩むことはない」
 視線をキラに向けると同時にラウはそう言った。
「そうですよ。そうでなければ、僕たちの仕事です」
 キラが動くのは一番最後でいい、とニコルも言う。
「……それでいいのかな……」
 だが、自分にも何かできるのではないか、とキラは考えるのだ。
「今はまだ動くべきではない。そう思うよ」
 下手に動けば、オーブが混乱するだろう。できれば、それは最低限にした方がいいのではないか。
「いずれ、ラクス・クラインが動くだろう。そのときまで待ってもいいのではないかね?」
 さらにラウはこう続ける。
「そのときまでは他の者達に任せておくことが、君が今、すべきことだと思うよ」
 そう言って彼は微笑む。
「ラクスは、動くでしょうか」
「動くだろうね。彼女は必要な時には」
 それが《ラクス・クライン》ではないか。彼はそう続ける。
「言いたくはないが、そういう点では彼はギルよりも上だよ」
 その言葉に、キラは苦笑を返す。
「まぁ、無理をしようとしても全力で止めさせてもらうがね」
「……それは怖いですね」
 彼は一度口にしたことは絶対にやる。それがわかっているから小さなため息とともに言葉を返す。
「大丈夫ですよ。議長がまだ何もされていませんから。それに、キラからもらった情報はきちんと裏をとります」
 ついでにアスラン達の動向も、とニコルは微笑んだ。
「それがいいだろうね」
 とりあえず、今は動かない方がいいと言うのが彼らの意見なのだろう。
「わかりました。でも、情報だけは集めさせてくださいね」
「仕方がないだろうね」
 キラの言葉に、ラウは渋々と言った様子でうなずいて見せた。

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