秘密の地図を描こう

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「……それも、間違いなく僕の罪だね」
 レイの話を聞き終わったキラは小さな声で呟いた。
「そんなことはありません!」
 即座にレイが言い返してくる。
「でも、守れなかったことは事実だよ?」
 守りための力がほしかったからフリーダムを手にしたのに、結局は……と視線を落とす。
「キラさん」
 そんな彼の手を握りしめながらレイが口を開く。
「キラさんの手は二本しかないんですよ? それで、すべてを救うのは無理です」
 いくら、キラがそう願ったとしても……と彼は続ける。
「それは、わかっているよ……でも……」
「もちろん、キラさんがみんなを守りたいと思っているのは知っています」
 だから、と彼はキラの手を握る指に力を込める。
「俺も軍人になりたいと思ったんです。そんなキラさんの力になりたかったから」
 一人では無理ならば、仲間を増やせばいい。例え、自分の力量が劣っているとわかっていても――いや、それならば人数が集まれば可能なのではないか。そう考えたのだ。
「俺にはキラさんほどの実力はありません。でも、手助けはできるつもりです」
 だから、一人ですべて背負わなくていい。彼はそう言いきった。
「第一、キラさんが守れなかったというなら、その場にいた他の人たちの責任はどうなるのですか?」
 あそこで戦っていたのはキラだけではないのだろう、と彼は言う。
「そうだけど……」
 だが、彼が言うほど自分は強くない。キラは心の中でそう付け加えた。
「第一、あいつにキラさんを責めるのは、単なる八つ当たりです」
 それだけは覚えていてほしい。彼はそう言いきる。
「レイ……」
「それに、もし本当にキラさんに責任があったとしても、俺はキラさんを非難しません」
 どんなときでも、それは変わらない。レイはきれいな笑顔でそう言った。
「もっとも、そう思っているのは俺だけじゃないですけど」
 きっと、ニコル達もそうに決まっている、と付け加える。
「……守れなかったのはキラさんだけじゃないです」
 こう言ってくれるのは、きっと、レイが優しいからだ。それでも、自分の罪は消えない。それを忘れてはいけないのだ、とキラは思っていた。

「……いいか? 最初に言っておく」
 シンを見下ろしながらイザークが言う。その態度が偉そうで――実際に偉いのだろうが――気に入らない。
「あいつを追い詰めるな。それが約束できないと言うのであれば、俺は今すぐ貴様を連れて帰る」
 例え、処罰されたとしても……と彼は続けた。
「そう言うなって……」
 苦笑とともにディアッカが口を挟んでくる。
「その兆候があったなら、無条件で殴りつければいいだけだろ」
 そこで終わらせればいいのではないか。
「会わせろという命令はその時点でクリアされているわけだし」
 別に、シンは納得しなくてもいいのではないか。その場合、二度と近づけない場所に派遣してしまえばいいだけだろう、と彼は続ける。
「ふん。確かに、な」
 会わせればいいだけのことか、とイザークもうなずく。
「……何で、そこまで俺を警戒するんだよ……」
 訳がわからない、と口の中だけで呟いたつもりだった。
「決まっているだろう。あいつは、前の戦いのせいで思い切り傷ついたからだよ」
 そして、今もその傷は癒えていない。
 しかし、本人はそれでも相手のことを気遣う。だから、周囲が彼のことを気にかけていなければいけないのだ。
「俺たちは、あいつの友人だからな」
 それがどうした、とディアッカは聞き返してくる。
「……別に」
 こう言い返しながらも、自分にはここまで言ってくれる人間がいるのだろうか。ふっとそんなことを考えていた。

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最遊釈厄伝