秘密の地図を描こう

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「だから、お前は危険なんだよ」
 思い込みが強すぎて、とレイは無意識に呟いていた。
「……なんか言ったか?」
 そのせいか。自分がそんなことを口にしていたとは彼に聞き返されるまで気づいていなかった。
 何と言い返すか、一瞬悩む。だが、あえて何も言わないという選択肢をとる。そうすれば、彼が勝手に判断してくれるだろう。
 それよりも、だ。
 寮内はとりあえず安全だと判断された。だから、明日キラが戻ってくる。同時に、彼がランダムにシミュレーションの相手をするはずだ。
 ルナマリア達ならばそれでもいい。
 全体的にレベルが上がれば個人個人の負担が減る。
 しかし、シンが相手ならばどうだろう。
「あいつは妙なところで勘が鋭いからな」
 それに、フリーダムの動きを実際にその目で見ているから、とレイは眉根を寄せる。
 やはり、彼との対戦は極力避けてもらうように行っておかなければいけない。あるいは、ミゲルか誰か、他の者に頼むかだ。
 いずれはばれるかもしれないが、それは遅い方がいいに決まっている。
「……ったく……ちまちまと面倒くさい」
 そんなことを考えていれば、シンのこんなセリフが耳に届く。
 もちろん、このままではいけないこともわかっていた。いずれ、シンにばれるに決まっている。そのとき彼がどのような言動をとるのか。それも想像が付いてしまう。
 それでどれだけキラが傷つけられるかも、だ。
 できれば、その前までにシンの《フリーダムのパイロット》に対する憎しみを弱めておくべきだろう。
 しかし、それがどうすれば可能なのか。未だに答えを見いだせない。
「教官に相談するか」
 ミゲルかニコルであれば、いいアイディアを聞かせてくれるかもしれない。
「問題は、時間か」
 彼らも仕事がある。守秘義務に関わる内容に関わっている可能性だってあるのだ。うかつに押しかけるわけにはいかない。
 しかし、今ならば、まだ大丈夫ではないか。
 車間も兼ねている彼らは、この時間に寮生の質問を受けるのも仕事なのだ。
「まだ大丈夫だな」
 今ならば、と判断すると立ち上がる。
「レイ?」
「ちょっと、疑問ができたからな。教官に質問してくる」
 この言葉とともに歩き出す。
「今、帰ってきたばかりなのに、まじめだな」
 あきれたような声でシンが言う。
「疑問はできるだけ早く解消した方がいいからな」
 それに対し、こう言い返す。
「……そういうもんか?」
 最後まであがいて、自分でどうしようもなくなってから質問するものではないのか。シンはそう言う。
「お前らしいな」
 だからこそ、厄介なのだ。
 適当なところで妥協できない上に、自分の考えに固執しかねない。それがプラスに働けばいいが、逆のことが多いような気がする。
 それを彼が自覚してくれるかどうか。
 もっとも、自分もあまりそれを大きなことを言えないかもしれない。
 自分も一歩間違えば彼と同じ立場だったかもしれないのだ。
 そうならなかったのは、キラが自分達に未来をくれたからに決まっている。だからこそ、自分は彼を守りたいのだ。
「……あいつもあの人に会えば変わるのか?」
 それとも、逆なのだろうか。
 どちらの可能性も考えられるから厄介だ。
「今、フリーならばいいんだが」
 それも含めて相談しよう。そう判断をすると、レイは足を速めた。

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最遊釈厄伝