秘密の地図を描こう
11
小さなため息とともに端末を閉じる。
「やはり、見つからないか」
本当に、どこに行ってしまったのか。アスランはそう呟く。
「ディアッカ達も忙しいから、仕方がないのか?」
ミゲル達ならば、もっとじっくりと探してくれるかもしれない。しかし、何と言って切り出せばいいのか。
「……二人とも、キラに殺されかけたからな」
もっとも、あれは戦争中だった。それに、二人を助けたのはオーブだ。だから納得してくれるのではないか。そうも考える。
しかし、実行に移せないのは、やはり怖いからかもしれない。
もし、断られたら。そう考えると二の足を踏んでしまうのだ。
「お前が連絡をしてきてくれないのが悪いんだぞ」
キラであれば、どのようなセキュリティがあろうともメールを送るぐらいなら可能なはずだ。
それなのに、未だに一本のメールも届いていない。
「それとも……俺のことが嫌いになったか?」
そんなはずはない。
そう信じてはいるが、だが、確実だとも言い切れないのだ。
自分がキラを傷つけた。その自覚もある。
しかし、だ。
「だからとって、カガリやラクスにも連絡をしないのは、おかしい」
それとも、と付け加える。二人には連絡が行っているのだろうか。それを自分が知らないだけなのか、と心の中で付け加える。
しかし、カガリの様子からはそんな事実を感じられない。彼女はその手の隠し事が苦手なのだ。だから、彼女が隠していたなら自分が気づかないはずがない。
だが、相手がラクスならば話は別だ。
彼女はあの本性をずっと隠し通していた。キラのメールのことぐらい隠すのは簡単ではないか。
問題はその理由だ。
「いったい、何故……」
自分達にそれを隠さなければいけないのか。
彼女が意地悪だけでそんなことをするだろうか。そう考えて、すぐにあり得ない話ではない、とため息をつく。しかし、こんな重要なことではないと思いたい。
「聞いても答えてはくれないだろうな」
絶対にはぐらかされるに決まっている。
それでも確認したい。
「子供達の顔も見たいし……久々にあっちに行くか」
そろそろ、カガリにも息抜きをさせなければいけないような気がするし、とため息をつく。
「あいつの立場を考えれば、逃げ道を与えてはいけないのだろうが」
それでも、このままでは彼女が壊れそうな気がする。だから、とアスランは付け加えた。
「……まずは本人の意思を確認するか」
この言葉とともに彼は体を起こす。そして、再び端末へと手を伸ばしていた。
「英雄は必要だ。しかし、コーディネイターはいらぬ」
その言葉に静かにうなずいてみせる。
「何としても、カガリ・ユラ・アスハの周辺からコーディネイターを排除しなければいけない」
「だが、あれの弟は無視できぬぞ?」
別のものがそう言う。
「確かに……元々、あれはナチュラルを守るために戦った。あれが離反したのは、アズラエルの失敗だったな」
「ならば、再度取り込めばよかろう」
カガリがいる以上、不可能ではないはずだ。
「だが、居場所がわからぬ」
「それも、カガリ・ユラを取り込めばわかるのではないか?」
優先すべきなのはオーブをこちら側に引き込むこと。そのほかのことは、その後でも十分。
「セイランにさらに動いてもらわなければいけないな」
これが彼らの出した結論だった。