積極自衛権の行使――それがプラントの判断。 大西洋連合との同盟――それがオーブの決断。 国としての決断に、個人の感情は押し流されてしまった。 地球上にいるザフトとの連絡は取れない。 その上、目の前には地球軍の艦隊が。しかも、背後にはオーブ軍が展開をしていた。 それがどういうことかはわかっている。オーブの誰かが自分たちを地球軍に売ったのだろう。そして、あそこに彼らがいると言うことは、自分たちが領海内戻ることは許さない、と言うことなのか。 そう考えて、タリアは唇をかむ。 だからといって、あきらめるわけにはいかない。そう判断をして、彼女は部下達に戦闘体勢を命じたのだった。 「レッドって……」 この場で何故……と思う。 その疑問はもっともなものだ。だが、その答えをタリアの言葉が教えてくれた。しかも、前方を突破しなければ自分たちに活路はないのだ、とも。 ならば、全力で戦わなければいけないだろう。 生き残るために。 しかし、悔しさが隠せない。そんなまま、彼等は戦闘のための体制を整えたのだった。 そして、開始される戦闘。 ビームの一つ一つに命のやりとりが交わされる。一瞬でも気を抜けばやられるのは間違いなく自分なのだ。 シンはようやく、その事実を現実として受け入れられるようになっていた。 同時に、守ることの難しさも。 それを知れば知るほど、フリーダムのパイロットに対する怒りがかき消えていくような気がしてならない。 だが、それは忘れてはいけないのだ。 それがあるからこそ、自分はこうして戦える。 怒りだけが、自分に残された唯一のものなのだから。 「どうしましたか、キラ」 海を見つめたまま動かないキラを心配したのだろうか。ラクスはこう問いかけてきた。 自分は、どうしても彼女たちに心配をかけるしかできないのだろうか、とキラは心の中で呟く。それも、自分が自分の進む道を決められないからなのかもしれない。 あるいは、まだあの戦いに心をとらわれているからなのか。 そう考えても、答えは見つからない。 何よりも、今はそれを探している場合ではないのだ、とキラは心の中で呟く。 「誰かが泣いている、また」 そう遠くないところで、彼等は戦闘を繰り広げているはずだ。自分たちが掴んだ情報が確かであれば。 戦いは、憎しみしか生まない。 家族を殺された恨みは、また新たな憎しみを生む。 その連鎖は果てしなく、つきることを知らないのではないか、と思う。 「何でだろう……何でまた……」 戦いをするのだろうか。 ようやく手に入れた平和だけで、どうして満足できないのだろうか。 その答えをキラは知らなかった。 激しさを増す戦闘。 多勢に無勢とはいえ、自分たちはここで死ぬわけにはいかないのだ。 その時だ。 地球軍の空母から何かが発進した。それを確認できる。 だが、初めて見るその機影は誰も知らない。 「MA……あんなにでかい!」 あれが、ただ大きいだけならばいいのだが、と思う。その性能がわからないがために不安はつきないのだ。 「タンホイザー機動!」 万が一のことを考えれば、早々につぶしておくに限る。そう判断をして、タリアはそう命じた。 しかし、その攻撃を敵のMAは耐える。 そのまま、主砲をミネルバへを向けようとしていた。 だが、撃たせるわけにはいかない。シンは即座に敵に向かって攻撃を加える。 その次の瞬間、敵は目標をインパルスへと変えたらしい。即座に攻撃を加えてきた。 「なんて火力とパワーだ!」 そして、このスピード。 果たして自分は……と不安が脳裏をかすめる。しかし、シンはそれを強引に押し殺す。 そんなためらいが自分を死に導く。 アカデミー時代、教官にたたき込まれたことだ。 それでも、と呟く声がある。それをどうしたらいいのかまでは教えてもらえなかった。シンはこう呟いた。 「政治は貴方のおもちゃではない!」 ユウナはカガリを叱咤する。 それは正しいのだろう。 だが、自分の命の恩人を売るようなマネを許せるわけはないだろう、とカガリは心の中で呟く。 同時に、どうして自分はこんなに無力なのか、と思う。 あのころ、何の後ろ盾も保たなかった三年前の方がもっと力を持っていたように感じられる。 それは錯覚なのだろうか。 その答えを、カガリは知らなかった。 だが、オーブの軍人達の間にはそんな政治家達の考えを否定する者も多い。 それでも、命令には従わなければいけないのか。 オーブの護衛艦の攻撃がミネルバに向けられた瞬間、シンの意識が一瞬地球軍のモビルあー間はからそれてしまった。その隙を敵が逃すはずはない。衝撃とともにインパルスは敵に捕らえられてしまった。 だが、ここで死ぬわけにはいかない。 自分の目の前で死んだ家族のためにも…… そう考えたとき、シンの中で何かがはじけた。 不思議と体が軽い。 敵の攻撃が遅く感じられる。 その感情のまま、シンは敵艦隊への攻撃を加えていた。 キラは厳しい表情で海を見つめている。 その先では戦いが行われていた。 それを止める手段を自分は持たない。 だが本当にそうなのか。 自分はただ逃げているだけではないのか。 キラは心の中でこう呟いていた。 アスランは、ザフトへの復帰を決断していた。そんな彼に、ギルバートが示したのは《フェイス》だった。ザフトでありながら、自由に動けるもの。それが、彼に与えられた地位だ。 「皆が平和に暮らせる世界のために」 その言葉に嘘はないだろう。そう思いたい。 だが、と心の中で呟く。 「お前は……怒るだろうな、キラ……」 それでも自分は選んでしまったのだ。そして、それを今更撤回するつもりはない。 「アスラン・ザラ。セイバー、出る!」 まずは地球へ。 そして、ミネルバへと合流をする。 その先で、いつか、キラの道とも合流することができることを信じたい。アスランはそう願っていた。 シンちゃん、種割れ。 この後どうなるのか不安ですね。キラは恐怖を覚えていましたが、彼はどうなのだろう。力を欲しがっていたようだし…… それと、アスラン。あんた、どこで着替えていたの! と思わずつっこんでしまいました。その前に議長に何をされたんだ、とかね。妄想は楽しいけど、書けません、きっと(苦笑) 05.01.12 up
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