彼に出会ったのは、三年前。
 まだ地球軍に所属していたアークエンジェルがザフトとの戦闘で大きく破損し、オーブに避難してきたときだった。

「……あれ?」
 ここ、何処だ……と思わず周囲を見回してしまう。
 コーディネイターだって道に迷うんだ。その事実はわかっていても、ちょっと認めたくはない。
 しかし、このまま進んでもさらに迷う可能性の方が大きいだろう。
「どうして、こうもややこしい造りに……」
 なっているんだ、とシンが呟いたときだ。
「君」
 柔らかな声が彼の耳に届く。それに慌てて視線を向ければ、ほんの少しだけ年上だろうと思える相手がそこには立っていた。
「ここは、一般の人は立ち入り禁止なんだけど……どこから?」
 小首をかしげてみせる仕草は、年上のはずなのにとても可愛らしい、と言う思いをシンに抱かせた。
「……それが……」
「覚えてないんだ」
 微妙に言葉尻を濁して告げた言葉だけで、彼は状況を察してくれたらしい。唇に苦笑を浮かべてみせる。
「なら、見つからないうちに戻った方が良いね」
 そして、こう言いながら、シンに手を差し出してくる。それをシンは無意識のうちにその手を取っていた。
 そのまま、二人は言葉を交わすことなく通路を進んでいく。
 やがて、一つの扉の前に辿り着いた。
「ここを真っ直ぐに行くと、確か案内所に着くはずだよ。そこで、行きたいところを聞けばいい。でも、ここのことは内緒にね?」
 でないと、大変なことになるから……と彼は微笑んでみせる。その表情に、シンは一瞬見とれてしまった。
「ありがとうございます」
 だが、直ぐに我に返ると、こう口にする。
 そのまま、彼から離れて駆け出した。

 彼が、当時は地球軍に所属していたコーディネイターでストライクのパイロット――後にフリーダムのパイロットになった《キラ・ヤマト》だと知ったのは、全てを捨て、ザフトに渡ってからだった。
 彼がどのような思いで、あの場にいたのかはシンは知らない。
 だが、彼が命をかけて、オーブを守ろうとしてくれたのは知っている。実際、自分はそのおかげで命を救ったのだ。
 それでも、こう思わずにはいられない。
 どうして、家族も守ってくれなかったのか……と。それがあの状況では不可能に近い事だとわかっていてもだ。

 ただ、あの微笑みだけは、今も忘れることが出来ない。

 全ては、まだ、オーブの理念を信じていた子供時代の思い出だが。
 今の自分に残されたのは、アスハに対する怒りと恨み。
 そして、力を持たなかった自分に対するマイナスの感情だけだ。
 今では、あの微笑みの印象以外に思い出せない。それでも、その存在だけは明確に刻み込まれている。
 それでも、もう一度だけでいいから、彼に会ってみたい、とは思う。
 もっとも、その時どのような感情が湧き上がってくるのかは、シンにもわからなかったが……



いきなり書き始めたデスネタです(^_^;
シン→キラ←アスランになるのでしょうか。ともかく、本編を追いかけてみようかと……と言うことは、当分キラが出てこない(T_T)
アスランに妄想して貰うしかないかなぁ(苦笑)