カガリとラクスがいるのはわかる。それに、アスランが付き合わされたのも、だ。だが、まさかディアッカやシン達までもがここに集まるとは思っていなかった。
「カガリ……オーブはいいの?」
「会見の予定があったからな」
 誰と、と問いかけなくても想像が付く。それも公私混同ではないのか、と思わずにはいられない。
「第一、私はお前の姉だぞ?」
 ついでに妹の顔を見ていって何が悪い、と彼女は胸を張る。
「おじさまとおばさまにも頼まれてきたしな」
 さらにこう付け加えられては反論も出来ない。
「……メールはちゃんとしているのに」
 経過も含めて、とキラはぼやく。しかも毎日だ。
「だからこそ、だろう?」
 そう言いながら、カガリは遠慮なく――だが慎重な手つきで――キラの腹部へと触れてきた。
「まだ目立たないな」
 そう言って彼女は微笑む。
「だって、まだ三ヶ月ぐらい?」
 大きくなるのはもっと後だ。もっとも、かなり不安定な時期だから、周囲が過保護になっているようだけど……とキラは付け加える。
「お前の場合、その位でいいんだ!」
 カガリがあきれたようにこういった。
「そうですわね。少しの不調でも隠さずに教えて頂けるのでしたら、ここまで心配はしないのですが」
 ラクスもそう言って頷いてみせる。
「やはり、ザフトへの復帰を送らせた方がいいでしょうか」
 さらにレイまでがこんなセリフを口にしてきた。
「それに関しては大丈夫だ。とりあえず、キラの護衛も連れてきたからな」
 会談の結果次第でラウは忙しくなるだろうが、あいつらがいれば大丈夫ではないか。カガリはそうも続ける。
「まぁ、お前はその子を無事に産むことを優先しろ」
 キラの代わりが出来そうな連中を置いていくから、と彼女が笑ったときだ。アスラン達にも状況が飲み込めたらしい。
「キラ……子供……」
 だが、それがさらに彼にショックを与えたのか。その口から出たのは単語でしかない。それでも意味がわかるのは状況が状況だったから、だろうか。
「多分、来年の春には生まれる、かな?」
 自分たちの誕生日の頃に、とキラは微笑む。
「そうなんですか?」
「おめでとうございます」
 シン達がそう言いながら笑みを向けてくる。
「って言うか……キラが母親って言うのは納得できるんだが……」
 ディアッカはディアッカで複雑な心境なのか。ぶつぶつと呟いている。しかし、いいのだろうか、とキラは心の中で呟く。それとも、アスランと同じでショックで周囲の状況が理解できなくなっているのか。どちらだろう、とキラは思う。
「私が父親になるのはそんなにおかしいかね?」
 だが、彼は間違いなく楽しんでいる。
「ラウさん、おかえりなさい。早かったですね」
 心の中でそう呟きながらキラは彼にそう声をかけた。
「代表のお気遣いで、身代わりが来たからね。押しつけてきたよ」
 そう言いながら、彼は真っ直ぐにキラへと歩み寄ってくる。そして、そっと抱きしめてくれた。
「私もそのつもりで連れてきたからな。適当に押しつけていいぞ」
 くすくすと笑いながらカガリが頷いてみせる。
「いったい、誰を?」
 連れてきたのか、とキラは問いかけた。
「フラガ達に決まっているだろう」
 アークエンジェルごと置いていく。だから、こき使っても構わないぞ、とカガリは笑う。
「あいつらなら、お前のフォローもなれたものだしな」
 そう言う問題ではないような気がする。だが、確かに彼らが傍にいてくれれば安心できると言うことも事実だ。
「カガリ、だんだんラクスに似てきたね」
 人の扱い方が、と告げれば「ほめ言葉として受け取っておこう」と彼女は言い返してくる。
「どちらにしろ、当面、お前の出番はない。だから、安心して子供を産め」
 いいな、と彼女は笑った。
「うん、わかっているよ」
 こうやって、自分がのんびり出来るのは、やはり平和だからだろうか。
 この子にはそんな世界だけを見せて上げたい。キラは、心の底からそう考える。その思いのまま、彼女はそっと自分のお腹に手を添えた。





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