「おそらく、それはエクスンテッド用に開発されていた機体だろうな」
 二人の問いかけに、ネオはあっさりとこういう。
「普通のパイロットじゃ扱えないはずだ」
 しかし、さらに付け加えられた言葉に嘘は感じられない。
「そこまで我々に教えていいのか?」
 同じ事を考えていたのか。バルトフェルドがこう問いかけた。
「存在しない人間が何を言っても構わないだろう」
 連中にしてみれば、とネオは言い返す。
「それに……今更連れ戻されても困るしな」
 こいつらも、と付け加えながら彼は三人へと視線を移す。投薬によって体調を保っているものの、それもいつまで続くか。
「まぁ、それに関しては数日中に何とかなると思うがね」
 モルゲンレーテから『出発した』と連絡があったから、とバルトフェルドが言葉を返す。
 それを耳にした瞬間、ネオがほっとしたような表情を作ったのがわかった。これで、昔の記憶が戻ってくれればキラ達がどれだけ喜ぶか。
「しかし、そうなるとかなり厄介だね」
 言っても仕方がないことだ。そうかんがえると、ラウはこういう。
「彼らの身体能力は、コーディネイターに匹敵するからね」
 もっとも、時間制限があるようだが……と続けた。
「そうだ。どうあがいても、後天的に作られたものには肉体的な無理がある、って事だろう」
 与えられた力に肉体が悲鳴を上げている。
 しかし、本人達はそれを感じていない。
 だからこそ、傍で見守るものが必要なのだ。
「結局、生まれる前に手を加えられた連中コーディネイターの方がまだ世界に受け入れられている。それを彼らは認められないのだ。
「まぁ、どちらにしても、俺たちは使い捨ての道具だったわけだが」
 連中にしてみれば、最終的に勝てばいい。そして、その時に、一人でも残っていればこいつらの方がコーディネイターよりも優秀だと言えると考えているはずだ。そうも続ける。
「だから、こいつらが《人間》として見てくれるあんたらの協力をしたいと思ったとしてもおかしくはないだろう?」
 だから、と言われてしまえば納得するしかない。
「まぁ、な」
 同じように考えていたのか。バルトフェルドはそう言って頷く。
「ともかく、俺たちは今から、そいつらを何とかするために動く。お前さん達はここで大人しくしていてくれるとありがたいね」
 そうでなければ、不本意な行動を取らなければいけなくなる。言外に彼はそう続けた。
「わかっているよ」
 苦笑と共にネオはそう言い返してくる。
「俺はともかく、こいつらは今、無理をさせられないからな」
 死なせたくない、と彼は続けた。
「そうだな」
 子供が死ぬのは見たくないな、とバルトフェルドも頷く。
「とりあえず、しばらくはお前達に構っていられないかもしれないが、我慢してくれ」
 そのまま彼はこう告げるときびすを返す。
「わかっている。こいつらも大人しくさせておく」
 苦笑と共に彼はそう言った。その表情に嘘はないだろうが、念には念を入れておくべきだろうか。
 そう考えながら、ラウはバルトフェルドの後に続いて廊下へと出る。
「心配はいらないと思うが、念のためにな」
 即座に彼はドアをロックした。
「……キラにばれないようにしないといけませんね」
 他の者達であれば妥協できるだろうが、彼女は出来ないはずだ。だから、きっと、文句を言うに決まっている。
「あいつはそれでいいんだよ」
 それがキラだ。そして、そう言う彼女だから、皆が着いていくのではないか。
「まぁ、あいつに出来ないことは俺たちがフォローすればいいだけだ」
 それが憎まれ役だろうと、と付け加える彼に、ラウは苦笑と共に頷く。
「それは俺がやる。だから、お前はキラを支えることに集中しろ」
 それが出来るのはラウだけだろう、とバルトフェルドは言い返してくる。
「……貴方がそれでいいのでしたら、私には異存はありませんよ」
 むしろ願ったりかなったりだ。そう言ってラウは笑う。
「ともかく、ブリッジに戻るぞ」
 話し合いをしなければいけない。そう言う彼に、ラウは頷いて見せた。



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最遊釈厄伝